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いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

 自身の不妊経験をきっかけに、NPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を設立した松本亜樹子さんが、多くの当事者の声を紹介しながら、不妊を巡る社会環境や制度面の課題、夫婦の在り方などを考えます。

妊娠・育児・性の悩み

年末に実家に帰りたくない! 妹の妊娠に「どうして私が先じゃないの?」

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 Nさんは、小売業につとめる35歳。二つ年上の夫とは、5年前に職場結婚をしたそうです。二人とも仕事が忙しい時期だったこともあり、結婚当初は「子どもは、そのうちでいいよね」と話をしながら避妊をしていました。

 でも、友人たちや会社の同僚が結婚し、妊娠・出産して子育てしている姿を見るにつけ、だんだん、その赤ちゃんたちが、とてもかわいらしく、(いと)しく思えてきました。そこで「そろそろ、うちでも子供を考えようか」と避妊をやめたのは、結婚して3年が過ぎてからのことでした。

タイミング法に取り組む

 しばらくは基礎体温をつけて、自分で排卵日を判断し、その日にタイミングをとって……という「自己タイミング法」を続けたのですが、なかなか妊娠できません。毎月、生理が来るたびに、「また今月もダメだったな……」と落ち込む日々。けれど「そのうちには」「来月こそは」と、次の排卵日に望みをつないでいきました。

 そんな日々が半年ほど続いたある日、テレビで「不妊治療」の特集がありました。たまたま夫とともにその番組を見ていたNさんは、人ごととは思えなくなってきて、「ねえ、もしかしたら、うちも不妊治療をしたほうがいいのかな?」と夫に話してみたのですが、夫は「考えすぎじゃない? そのうちできるよ」と、あまり乗り気ではない様子。仕方なく、その場はそれで話を終わらせたのですが、Nさんは「もしかしたら私は不妊症なのかも……」と気になってしかたなくなったそうです。

 その翌月、毎月のタイミングの努力もむなしく生理が来てしまった日に、Nさんはいよいよ決意して夫に話をしたそうです。

夫を説得して受診

 「やっぱり病院に行ってみたほうがいいと思うの。検査だけでもして、もし何もないってわかったら、それはそれで安心できるし。どうかな?」というと、夫はやはり気乗りしない様子で「うーん、まぁ。そんなに気になるのなら行くだけ行ってみれば?」とのこと。「行ってみれば、って……。あなたも一緒に行くのよ?」「えっ、俺も? なんで男の俺が?」「男性にも原因がある場合もあるってネットに書いてあったの。それに、初診は二人で行かなきゃいけないんだって」。渋る夫をなんとか説得し、とにかく説明会だけでもと行ってみることにしました。

 週末、クリニックの近くの会議室で行われた「初診者説明会」会場には、Nさんたちのようなカップルでいっぱい。広い会場が満席で、後ろのほうに椅子を増やしていたほどだったそうです。Nさんたちは驚いたのと同時に「なんだかホッとしました」と、不妊かもしれないと悩んでいるのは自分たちだけではなかったことに安堵(あんど)した、と話してくれました。何よりも、夫が治療に対して前向きに考えてくれるきっかけになったことが、Nさんにとってはうれしいことだったそうです。そして二人はまずタイミング法から、始めることにしたのでした。

 これまでの自己流のタイミングとは違って、クリニックで受けるタイミング法は、ホルモン値も測るし、内診も行います。「『これまでとは全く違って本格的なので、これでもう妊娠できる!』と1回目の時に期待をしてしまったのですが……。そんなに簡単にはいかず、ダメでした」と、がっかりしたことを話すNさん。その後、半年ほどタイミング法を続けたのですが、妊娠の気配はなく、今度は人工授精を受けることになったそうです。

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松本亜樹子(まつもと あきこ)

NPO法人Fine理事長/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

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