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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

暖房が利いた部屋で、昼間の「ひと眠り」が心地いい季節ですが、ちょっと工夫をすることで…

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眠気が強いなら昼食前でもOK

 ところが、この時間帯にたっぷり眠ってしまうと、夜間睡眠が浅くなってしまいます。ある実験によれば、昼寝をした分の2、3倍に相当する時間、夜中の眠気が飛んでしまうという報告もあります。実際、シエスタの習慣のある国では、昼寝が終わると眠気がなくなって元気になり、午後遅くから再び仕事を始めます。結果的に終業時刻、夕食、就寝時刻が遅くなり、起床時刻は逆に早まって、一日の睡眠時間の合計はシエスタのない国々と変わりません。つまり、夜間の睡眠を昼間に補っている、見方を変えれば昼寝が長いために夜間睡眠が短くなっている、とも言えます。

 日本人の場合、睡眠不足による眠気解消のため昼寝をするケースが多いのですが、ここで長く眠ってしまうと、先のような理由で悪循環に陥る人もいます。特に、夜型生活の傾向が強い人は、長めの昼寝を取ってしまうことで、夜半過ぎに目が () えてきて就寝時刻がさらに遅くなってしまうのです。また同じ昼寝時間でも、午後遅くなるほど夜間睡眠への影響が大きくなります。一般的に「昼寝は午後3時前まで」と書かれているのはそのためです。私の場合、「眠気が強いなら昼食前に寝てもOK」と患者さんに指導することもあります。早い時刻ほど夜中の影響が少ないからです。

「昼寝前のコーヒー」が意外にも

 実は眠気解消のためには、それほど長い昼寝は必要ありません。30分程度の昼寝でも、その後、数時間は眠気が解消され、仕事のパフォーマンスも向上するという研究結果が数多くあります。むしろ中途半端に昼寝が長いと、目覚めが悪くなることも少なくありません。皆さんも居眠りの後に 倦怠(けんたい) 感やボンヤリ状態が続いたことはないでしょうか? 昼寝でも30分以上寝続けると深い睡眠(深いノンレム睡眠)に入ってしまうことがあり、その途中で起こされると眠気がなかなか取れにくくなるからです。この現象は睡眠慣性と呼ばれます。これでは本末転倒で昼寝の意味がありませんね。

 昼寝を上手に取るコツは、「早めに、短めに」です。昼寝からスッキリと目覚めるには、毎日同じ時刻に同じ時間だけ寝てみることです。つまり「戦略的に寝る!」ということ。

 心地よく感じる昼寝の時間には個人差があります。スマホのアラームなどを設定して目覚め感のよい長さと時間帯を見つけましょう。昼寝前にコーヒーを飲むことを勧める研究者もいます。カフェインを摂取してから覚醒効果が出るまでに最低20、30分ほどかかるので、ちょうど昼寝が終わることに目覚め効果を利用できるという戦略です。

 コーヒーの香りをかいだだけで目が覚めてしまう? それは心理的効果なので、ご心配なく。(三島和夫 精神科医)

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会理事、日本学術会議連携会員。著書に「不眠症治療のパラダイムシフト」(編著、医薬ジャーナル社)、「やってはいけない眠り方」(青春新書プレイブックス)、「8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識」(共著、日経BP社)などがある。

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