新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
グルコーストランスポーター1欠損症 脳が栄養不足に ケトン食なしでは生活できず
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

【今月のゲスト】
古田智子(ふるた・ともこ)さん
2008年、第2子の娘が「グルコーストランスポーター1欠損症」と診断される。同年6月、同じ病気を持つ患者の親とともに、glut1異常症患者会を設立し、2008年から20年まで会長を務めた。歴史の浅い希少難病であることと、唯一の治療法が厳しい食事療法であるため、情報発信と仲間作りのための勉強会・交流会の開催や、関係学会への患者会ブース参加、医療関係者向けの講演などを中心に活動を続けている。
・glut1(グルットワン)異常症患者会 http://glut1ds.g2.xrea.com/
glut1(グルットワン)異常症患者会の古田智子さん(上)
三が日は開けたが、神社へ続く参道はいまだに人の通りが多い。参道沿いにある私のカフェは今日から営業だ。
入り口を念入りに掃除していたら、声をかけられた。
「のぶさん!」
あ、古田智子さんだ。
古田さんの18歳になる娘さんは、生まれつき「グルコーストランスポーター1欠損症」という病気をもっている。古田さんは、「glut1(グルットワン)異常症患者会」という患者や家族の会をつくった人だ。
親子そろって店内に入り、彼女はコーヒーを注文した。私は今年初めて、お客さんにドリップする。
突然の脱力や手足が動かなくなり
「おせち料理って、娘にとってはほとんど食べられないのよね」
この病気は、生まれつき遺伝子に異常があり、脳に「糖」を正常に取り込むことができない。脳がエネルギー不足となり、突然、全身の力が入らなくなったり、手足がうまく動かなくなったりする。
薬などによる根治的な治療法はない。症状を抑えるため、食事で炭水化物とたんぱく質を制限し、代わりに脂質をエネルギー源とする特殊な食事療法を常に行わなければならない。
私たちが一般的に食事面で気をつけるように言われるのは、脂質を取り過ぎないようにすることなので、まったく逆の食事療法ということになる。
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