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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

「帰ってくる父親に声をかけたい」「叱られてベランダに」…目を離した3~4分で子どもは転落する

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  高所からの転落について、東京消防庁のデータ を見ると、2015年から19年の5年間に、0~5歳の子ども70人が救急搬送されていました。窓が43人(61%)、ベランダが26人(37%)、天窓が1人でした。入院が必要な例が8割を超え、2階からの転落が40人(57%)、3階以上の高層階からの転落は26人(37%)でした。高所からの転落は、ベランダより窓の方が多くなっていました。

 これら頻発する高所からの幼児の転落を予防するには、どうしたらいいのでしょうか? それを考えるには、転落が起こる直前から、転落するまでの状況を分解して、それぞれの状況に対して具体的な予防策を考える必要があります。

「帰ってくる父親に声をかけたい」「叱られてベランダに」…目を離した3~4分で子どもは転落する

イラスト:高橋まや

ベランダの柵をよじ登るのに10秒はかからない

 これまで、子どもが柵によじ登れるかどうか、その高さはどれくらいか、という実験が行われてきましたが、そのデータだけでは具体的な予防策にはつながりません。そこで、私が理事長を務め、子どもの事故防止への啓発活動を行っているNPO法人Safe Kids Japanでは、メンバーの他、子どもの発達の専門家、保育関係者、マンション等デベロッパー、住宅設備メーカー、ホームインスペクター、技術士、メディア関係者など多職種によるチームを結成し、この問題に取り組むことにしました。

「帰ってくる父親に声をかけたい」「叱られてベランダに出された」…目を離した3~4分で子どもは転落する

転落が起こる直前から転落するまでの状況を分解した図(作成:北村光司/産業技術総合研究所主任研究員、Safe Kids Japan理事)

 これは、転落が起きる直前から転落するまでの経緯を表した図です。経緯を細かく見ていきましょう。

 〈1〉ベランダに出る前の状況
 「ごみ捨てに行った保護者を確かめたい。呼んでみたい」「帰ってくる父親に声をかけたい」「保護者に叱られてベランダに出された」「何かが外に飛んでいるので見たい」などの状況があって、子どもは行動を起こすことになります。「ごみ捨てで3~4分、家を空けただけ」とよく言われますが、子どもがベランダの柵に飛びついてよじ登るのに10秒はかかりません。「3~4分」は、転落に要する時間としては十分な時間なのです。
 〈2〉ベランダに出る
 「窓が開いている」「窓のカギが開いている」「子どもでも容易に開錠できる」といった場合に、子どもがベランダに出るわけですが、これに対しては「窓が開かないようにする」「窓が数センチ以上開かないような仕様にする」「子どもでは開錠できないような仕組みの補助的な鍵を取り付ける」などの対策が考えられます。こうした対策のための製品はすでに販売されているので、導入しやすいでしょう。しかし、保護者自身が窓を開けていることもありますし、閉め忘れることもあります。
 〈3〉踏み台になるものがベランダにある
 「プランターやエアコンの室外機など、いろいろなものがベランダに置かれている」「子どもが室内から踏み台になるものを持ってくる」という状況には、「ベランダに物を置かない」「柵を高くして乗り越えさせない」といった対策が考えられますが、実際には物を置かないわけにいかなかったり、自分で柵の高さを変えられなかったりと、難しい面もあります。
 〈4〉柵に近づく・よじ登る
 「柵を高くする」「柵の表面素材を滑りやすいものにする」「くるくると空回りして手をかけにくい手すりにする」といった対策が考えられますが、ベランダの内側に落下してケガをする可能性があります。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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