ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
看取り犬「文福」が また…、ベッドに上り、慈しむように寄り添い 見送る
特別養護老人ホーム「さくらの里山科」で昨年11月の終わり、 看取 り犬で知られる 文福 が、また一人、入居者の方を看取りました。
逝去されたのは、寺澤倉人さん(ご家族の承諾を得て実名で掲載、90歳代男性)。文福が暮らす2-1ユニット(区画)の入居者でした。寺澤さんが「さくらの里山科」に入居したのは一昨年11月のこと。実は、奥様が先に入居しており、もう何年も暮らしていました。奥様が入居した際は、急ぐ必要があったため、空きがあった、ペットがいない普通のユニットに入居しました。おそらく、奥様は寺澤さんほどには犬が好きではなかったのだろうと思います。
寺澤さんは筋金入りの犬好きだったため、犬と一緒に暮らせるユニットを希望しました。そのため、夫婦でも別々のユニットで暮らすことになったのです。「さくらの里山科」では、異なるユニットに入居した夫婦は何組もいます。その場合でも、互いに部屋を訪れ、一緒に過ごすことができます。そうやって夫婦の時間を十分に持つことができていました。
寺澤さん夫婦の場合も、本来は一緒に過ごす時間がたくさん持てるはずでした。しかし、それは許されませんでした。コロナ禍のせいです。
寺澤さんが入居したのは、コロナ禍の真っただ中です。「さくらの里山科」でも、厳しい感染予防態勢を取っていました。そのため、入居者の方々のユニットを越えた交流を禁止していました。万が一、入居者が感染した場合、他のユニットに感染が拡大してしまうのを防ぐためです。
ユニットは居室10室と、リビング、キッチン、3か所のトイレ、風呂、脱衣室で構成されています。玄関もあって、完全に独立した空間になっており、いわば10LDKのマンションのような構造です。入居者は基本的にはユニットの中だけで生活できます。また、介護職員はユニットごとに配属されており、夜勤(1人で二つのユニットを担当)などを除けば、複数のユニットで勤務することはありません。ケアマネジャー、看護師、作業療法士、管理栄養士などホーム全体で勤務する少数の専門職以外は、ユニットをまたがって動く職員はいません。入居者の方がユニットから出なければ、複数ユニットに内部感染が拡大する可能性は低いと言えるのです。
そのため、この2年間、入居者の皆さまには申し訳ないのですが、ユニットからほとんど出ることのない生活を強いています。 閉塞 感のある生活は大変なストレスだということはよく分かっています。しかし、ホーム内での感染拡大を予防するためには仕方がなかったのです。
おそらく、ユニット型特別養護老人ホームの多くが、「さくらの里山科」と同じ対策を取っていることだろうと思います。正式な統計は見ていませんが、ユニット型特別養護老人ホームでのクラスター感染の件数は、ユニット型ではない従来型の特別養護老人ホームよりも少なかったのではないかと私は推測しています。
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静かに泣きました。あたたかい涙です。悲しすぎる別れの話をたくさん聞きます。だからよけいにうれしかった。本当に良かった。スタッフのみなさんの熱いお気持ち。ありがとうございました。文福ちゃんにも、ありがとうね。元気でね。
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