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医療・健康・介護のニュース・解説

科学的介護の世界<中>送迎計画、介護記録に支援システム 職員の負担減らしケアに集中

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 介護現場では、職員が利用者のケアに集中できるようにするため、提供したサービスの記録といった付随的な業務の効率化が課題となっている。最新の支援システムの導入を通じて、介護の質の向上や職員の負担軽減につなげる施設も増えている。

■負担減り離職防ぐ

科学的介護の世界<中>付随業務 代わりに担当

デイサービスでの送迎の様子。システムを導入して業務を効率化した(相模原市のケアパートナー相模大野で)

 「長い場合、1日に4時間かかった時もあった」。相模原市のデイサービス「ケアパートナー相模大野」の志村八千代センター長(39)は、利用者を車で送迎する計画作りが、職員の大きな負担となっていたことを振り返る。

 道順や利用者同士の人間関係などを考慮しながら作成しなければならないため、利用者の住所や性格を熟知したスタッフが担う属人的な業務になりがちだったという。

 こうした課題に対応するため、運営会社のケアパートナーは2018年11月から、パナソニックカーエレクトロニクスの送迎支援システム「DRIVEBOSS」の導入を始めた。

 送迎計画はその日の利用者の顔ぶれに応じて作成される。車いすを使っているかどうかや、その人が同乗したくない利用者といった情報を入力しておけば、計画に反映される。

科学的介護の世界<中>付随業務 代わりに担当

アプリで介護記録を入力する楠田さん。「入居者の様子を確認しながら記録出来るようになった」と語る(北九州市のさわやか海響館で)

 導入によって送迎計画の作成にかかる時間は劇的に減った。志村センター長は「早ければ1、2分で作成出来るようになり、業務の負担感も減った」と話す。

 また、導入前は特定のスタッフしか出来なかったこの業務を他のスタッフも受け持てるようになった。現場を取り仕切る立場のスタッフが後輩の育成にあたる時間が増え、介護のスキルや利用者へのサービスの質の向上につながっているという。

 ケアパートナーの永島啓介・コンプライアンス課長(49)は、「利用者に直接関わる仕事がしたいのに、送迎計画など付随的な業務に追われてばかりいると職員がやる気を失いかねない」と、離職防止にも一役買っているとみている。

■アプリで記録短縮

科学的介護の世界<中>付随業務 代わりに担当

FonLogの画面。誰にどんな介護をしたのかを簡単に記録出来る

 介護施設では、誰にどんな介護をしたかの記録を残すことは重要だ。体温や血圧といった体調に関する数値や、食事や入浴の状況など全ての介護内容と時間について、利用者全員分を記録する必要がある。

 何種類も記録すべき書類があり、体温や血圧など同じことを何度も書くことも求められる。北九州市の介護付き有料老人ホーム「さわやか海響館」の斎藤晃施設長(47)は「なんでこんな無駄なことを……、という思いがあった」と語る。手書きのため、後から他人が読むと字が解読できないケースもあったという。

 このため、海響館ではスマートフォンを使った介護記録アプリ「FonLog(フォンログ)」を導入した。誰に何をしたのかをスマホで選択すれば、自動的に介護記録が残せる仕組みだ。食事やレクリエーションといった複数人に同時に行う介護でも、一度の入力で出来る。何種類もある介護記録にも一括で反映される。

 導入後、「介護記録にかかる時間が短縮され、記録のための残業もなくなった」(斎藤施設長)という。施設で働く看護師の楠田佳子さん(35)は「以前はいったん介護業務の手を止めて紙に書く作業をしていたが、入居者の顔を見ながら記録が出来るようになり、体調の変化にも気付きやすくなった」と効果を実感している。

 アプリを開発した九州工業大の井上創造教授(情報工学)(47)によると、手書きで1人1日あたり57・6分かかっていた介護記録の時間が34・6分まで減少。さらにAI(人工知能)による行動認識や予測技術を活用すれば23・8分まで削減出来ると試算された。

 井上教授は「直接的な介護ではない業務にかなり時間がかかっていた。記録そのものを効率化するという観点からアプリを作った」と語る。

効率化の背景に人手不足

 介護業界で業務の効率化が求められる背景には、深刻な人手不足がある。介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によると、介護事業所全体の約6割が人材の不足感があると回答した。様々な支援機器の導入によって、少ない人数でもケアの質を落とさずに業務を継続することが模索されている。

 厚生労働省の推計では、高齢者人口がほぼピークとなる2040年度には介護職員を今より69万人増やさなければならなくなる見通しだ。少子高齢化で、担い手不足の解消は容易ではなく、厚労省は情報通信技術(ICT)の活用を対策の柱の一つに位置づけている。

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