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ワクチンだけで感染防げぬ…2回接種後クラスター、施設側「ウイルスはわずかな隙も見逃がさず」

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 新型コロナウイルスの「第5波」のさなかに、ワクチン2回接種後に感染する「ブレイクスルー感染」でクラスター(感染集団)が発生した岡山県の特別養護老人ホームが、読売新聞の取材に応じた。施設は接種後も職員の移動を制限するなど対策を継続していたが、防げなかった。接種の広がりを背景に行動制限の緩和が進むが、施設側は「感染防止策の徹底が不可欠だ」と訴える。(松田卓也)

ワクチンだけで感染防げぬ…2回接種後クラスター、施設側「ウイルスはわずかな隙も見逃がさず」

手指を消毒する日本原荘の職員ら。クラスター発生後は以前にも増して感染対策に気を使っている(岡山県津山市で)

 岡山県津山市の特別養護老人ホーム「日本原荘」。要介護度3~5の長期入所者38人と短期入所者6、7人が利用し、職員は約40人。長期入所者と職員のほぼ全員が、6月までに米ファイザー製ワクチンの2回接種を終えていた。

 最初の感染者が確認されたのは8月23日。短期入所者の90歳代男性が、2回目のワクチン接種を受ける際の検温で微熱があることがわかり、PCR検査で感染が判明した。

 連絡を受けた保健所が入所者と職員にPCR検査を実施したところ、最終的に入所者21人(70~90歳代)、職員4人の感染が確認された。計25人の感染者のうち、最初に感染が判明した1回接種の1人と未接種の2人以外の22人はワクチンを2回接種していた。

 9月23日にクラスターは終結したが、終末期のケアを受けていた感染者の90歳代の女性1人が基礎疾患が原因で死亡した。残る感染者はいずれも回復している。感染源はわかっていない。

 施設では、ワクチン接種後も感染対策を継続していた。入所者の検温は1日2回実施。家族との面会は窓越しに限定し、緊急事態宣言の発令中は停止していた。施設外の人との接触を極力減らすため、職員は県外だけではなく、県内で人口が多く感染者が集中する岡山市など県南部との往来も自粛していたという。

 国立感染症研究所(東京)が8月に実施した調査では、感染予防効果は推定で1回接種した人が53%、2回接種した人が87%だった。福原文徳施設長は「ワクチンだけでは感染を防げないことを前提に対策していたが、ウイルスはわずかな隙も見逃さないと痛感した」と語った。

 施設ではクラスターの終結後、これまでの感染対策を改めて徹底するとともに、保健所の助言で、職員用に目からの感染を防ぐためのゴーグルを導入した。

 

 

ワクチン重症化を予防

 

 ブレイクスルー感染にどう対処すればよいのか。

 厚生労働省の「予防接種・ワクチン分科会」で会長代理を務める中野貴司・川崎医科大教授(感染症学)によると、新型コロナウイルス感染症では〈1〉鼻やのどの粘膜がウイルスに感染〈2〉のどの炎症や嗅覚障害を発症〈3〉気管支・肺に感染が進む――という経過をたどる。

 ワクチンでできる抗体は〈1〉から〈3〉の間に作用してウイルスを退治するが、接種から時間がたつと、抗体量が減少し、体内に入った後に防ぎきれずに感染する。

 しかし、抗体量が減っても免疫の記憶でウイルスが侵入した際、体内で再び抗体がつくられる。このため、ワクチン接種は、重症化や死亡のリスクを低減させる効果が期待されている。

 国立国際医療研究センターが7~9月の感染者約2500人を分析したところ、ブレイクスルー感染は2%(54人)で、うち44人が65歳以上の高齢者だが、集中治療室(ICU)に入ったのは1人だけだった。未接種の高齢者で感染したのは184人で、うち30人がICUに入っていた。

 ワクチンの感染予防効果は2回接種後から半年で、全ての年代で減少するとの海外の報告もあり、政府は3回目の接種を12月に医療従事者から始め、年明け以降、高齢者らに拡大する。

 中野教授は「重症化を防げれば医療の 逼迫ひっぱく を回避でき、ワクチンは有用だ」とした上で、「インフルエンザの予防接種後もマスクや手洗いをするのと同じで、油断せずに対策を徹底することが大切だ」とする。

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