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解説

もっと知りたい認知症

#老後のお金(下)自分がもし認知症になったら…家族信託で備える

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 北九州市で一人暮らしをしていた女性(82)は、自分がもし認知症になったら、自宅を売って介護施設に入りたいと考えた。そこで同市の司法書士、本多寿之さん(56)=写真=に相談。娘(50)との間で「家族信託」の契約を結び、自宅を娘の名義にした。その後、女性は実際に施設に入居。娘は契約に沿って自宅を売却し、そのお金で施設の費用を賄っている。

「家族信託なら財産を願い通りにできます」と話す本多さん

 

 家族信託は、親族など信頼できる人と契約を結び、自分の財産を託す仕組みだ。契約では、財産を誰のために使うかが明記され、託された人は、その人のためだけに財産を管理・処分する。本多さんは「認知症になっても、希望した通りにしてもらえます」と強調する。

 認知症などで判断能力が衰えると、口座が凍結されたり、不動産を自分で処分できなくなったりする恐れがある。そのため、財産があるのに生活費が引き出せなくなる人や、施設に入るためのお金が用意できない人もいて、家族が肩代わりすることもある。家族信託をしておけば、そうした危険が避けられる。

 元気なうちにできる備えには、成年後見制度の一種「任意後見」もある。家族などを後見人に選び、預貯金や不動産の管理だけでなく、見守り、年金の受け取り、入退院や介護の手続きといった生活を支える役割も委ねられる点などが、家族信託とは異なる。任意後見と家族信託を組み合わせることもできる。

 コロナ禍で将来への不安が高まったからか、家族信託などへの問い合わせが増えたという。本多さんは「自分や家族の安心のために、財産をどう活用していくか考えてほしい」と話す。

判断能力があるうちに

 家族信託ができるのは判断能力がある人で、認知症になってからでは契約できない。財産を託せるような信頼できる人がいることも不可欠だ。契約時に司法書士らに払う費用は、託す財産の1%程度が目安で、ほかに不動産登記の費用などがかかる場合がある。正しく財産管理されているかチェックするため、別の親族や司法書士などを「監督人」として置くこともできる。

 任意後見も、判断能力があるうちに契約する制度。家庭裁判所が監督人を選任し、監督人は後見人からの定期的な報告を受ける。監督人になるのは弁護士などの専門家が多く、月1万~2万円ほどの報酬を払い続ける必要がある。

 (このシリーズは饒波あゆみが担当しました)

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