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医療空白救え、「登録医師」奔走…仲介のベンチャーに存在感

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 新型コロナウイルスの感染拡大時は、病床不足によって自宅療養者が十分な治療を受けられない問題が起きた。そんな医療の「空白」をカバーし、存在感を増しているのが、登録する多数の医師を仲介するベンチャー企業だ。感染の波に応じ、必要な時にマンパワーを供給できる柔軟さが特徴で、「第6波」に備える自治体との連携も進んでいる。(川崎陽子)

自治体連携

医療空白救え、「登録医師」奔走…仲介のベンチャーに存在感

コロナ患者を自宅で診察するファストドクターの登録医師(同社提供)

 第4波や第5波で病床が 逼迫ひっぱく した地域では、自宅療養中に症状が急変しても、医療機関をすぐに受診できないケースが相次いだ。大阪市では4月、救急搬送先が見つからずに救急車内で1日半待機させられた人もいた。

 こうした状況の中、「ファストドクター」(東京)は夜間や休日の往診サービスを都市部を中心に展開。患者から電話や LINEライン で連絡を受けると、提携先のクリニックなどを通じ、医師が患者宅に駆けつけている。

 同社は2016年設立。人材として活用するのが、総合病院に所属する勤務医らだ。同社に登録してもらい、勤務時間外に往診先を紹介していたが、コロナ禍で患者からの依頼が急増。登録する医師も1300人を超えた。

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ドクターズが運営に関わる「大阪コロナ大規模医療・療養センター」

 自宅療養者のケアが課題となっていた自治体も、同社と提携。大阪府では春から、自宅から患者が保健所に相談すれば、同社を通じて医師が往診し酸素投与や投薬などを行っている。

 病院や診療所など既存の医療機関が担うことが難しいサービスで、同社に委託する自治体は大阪府や東京都など計13自治体ある。

 救急医でもある同社の菊池亮代表(35)は「パンデミックに備えて恒久的に医療体制を拡充し続けるのは費用面でも現実的ではない。コロナ禍を機に、より効率的に人材を活用できる新しい形の医療を考えていくべきではないか」と語る。

臨時施設運営

 第6波に備え、大阪府が整備した1000床規模の臨時施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」(大阪市住之江区)。大型展示場「インテックス大阪」の一部を利用した施設の運営に関わるのは、19年に事業を開始した「ドクターズ」(東京)だ。

 同社にも勤務医ら400人以上が登録。府から委託を受け、センターに患者が入れば、中等症病床(200床)で必要となる医師約10人と看護師約30人を確保する態勢をとっている。

 各分野の専門医が、遠隔地から現場をオンラインで支援する準備もしている。

 同社の本業は、医療現場のデジタル化に向けた新サービスの開発。登録者の中には大学病院の教授や病院経営者もおり、助言を受けながら遠隔医療システムの開発も進めていた。

 柳川貴雄社長(40)は、かつて長野県松本市の大学病院で勤務した脳外科医。マンパワー不足を補うために心電図のデータを転送して遠隔診断できるシステムを整備した経験を持つ。

 同社は、コロナに感染したホテル療養者に対するオンライン診療や、ワクチン大規模接種会場でのオンライン予診の医師も仲介しており、柳川社長は「コロナ禍では平時とは比べものにならないマンパワーが必要となった。医師同士がオンラインでつながれば、知識や経験を共有でき、診療の幅が広がる」と話した。

 横浜市立大の安川文朗教授(医療経済学)の話「コロナ患者を受け入れた一部の医療機関に負担が集中する一方、比較的余裕のある医療機関もあった。こうした中で新たな医療サービスが負担の再配分の役割を果たしたと言えるのではないか。ただし、新たなサービスだけに継続性や提供される医療の質が確保できるかなど、まだわからない部分もある。今後、検証していく必要があるだろう」

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