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かかった費用をカバーする「実費型」医療保険 メリットとデメリットは?

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 病気やけがで入院すると、治療費などが膨らんで思わぬ出費になる場合がある。備えとなる民間の医療保険では、「入院1日につき1万円」といった形で給付金を受け取れる一般的な商品のほかに、実際の費用に応じて補償を受けられる商品もある。特徴や使い分けについて専門家に聞いた。(阿部明霞)

[アドバイザー]酒井富士子さん

「実費型」医療保険 入院時の窓口負担補償

さかい・ふじこ。ファイナンシャルプランナー、経済ジャーナリスト。「日経ウーマン」「日経マネー」などの副編集長を経て独立。編集プロダクション「回遊舎」を設立し、代表取締役を務める。近著に「マンガと図解でよくわかる つみたてNISA&iDeCo&ふるさと納税」。

 一般的な民間の医療保険は「日額型」と呼ばれる。入院1日につき5000円や1万円といった形の契約になっていて、受け取れる保険金は入院日数によって決まる。手術をした場合には、日額の何倍かを追加で受け取れるケースが多い。

 一方で近年、注目されるのが「実費型」。検査や手術代も含め、原則、入院時に窓口で払う治療費の自己負担分を穴埋めできる。現役世代だと公的な医療保険で治療費の7割が賄われるため、残る3割の部分が保険金として給付される。

 ファイナンシャルプランナーの酒井富士子さんは、「日額型は支給される額を予測しやすいが、入院費が高額になれば保険金ではカバーできなくなる可能性もある。実際の費用に応じて支払われる実費型は、限度額はあるものの、ある程度、安心できる」と説明する。

 治療費以外に、個室など少人数の病室を利用した場合の「差額ベッド代」などもかかる場合がある。

 公益財団法人生命保険文化センターの2019年度の「生活保障に関する調査」では、入院時に負担した費用(治療費の自己負担、食事代、差額ベッド代、衣類・日用品代など)は1日あたり平均2万3300円と16年度より3500円増えた。

 日額型は、入院日数に応じた給付金と、条件を満たした手術などの際の給付金で、こうした支出をカバーする。実際の出費より多い金額を受け取れることも、不足する場合もある。

 実費型では、保険会社による違いはあるが、差額ベッド代なども、基本補償や特約によって支出した額を受け取れる仕組みがあり、入院にかかった費用全体でみて過不足が生じにくい。

 二つの保険を具体的にイメージしてみよう。

「実費型」医療保険 入院時の窓口負担補償

 会社員の男性が骨折して手術し、4日間入院した。治療費の自己負担が11万円で、差額ベッド代などは5万円だったとする。

 例えば、入院1日1万円、手術給付金10万円という契約内容の日額型の場合、1万円×4日間+10万円の計14万円が支給される。

 実費型の損害保険ジャパン「入院パスポート」(新規加入は69歳まで)は月間の支払い上限が50万円。差額ベッド代特約を付けていれば、単純に自己負担額の16万円が受け取れる。

 酒井さんは「実費型は期間が1年や10年などの定期保険で、更新時に保険料が上がる点に注意が必要。中高齢期の負担が大きくなるデメリットがある」と話す。

 例えば、1年更新の「入院パスポート」で上限1日1万円の差額ベッド代特約を付けた場合の月額保険料は、30歳で2950円、40歳で2790円、50歳で3880円、60歳で8760円などとなっている。

 民間医療保険の保険料は通常、入院リスクが高まる中高齢期にかけて上がる。ただ、日額型の終身保険なら契約時の保険料で変わらず、若い頃に加入すれば高齢期の負担を抑えられる。

 酒井さんは「終身の日額型に加入している人も多いと思うが、それで不安な部分を、実費型を追加で契約して補うという使い方もできる」と話す。加入を検討する際は、「どのような補償が受けられ、保険料はどのくらいになるかをよく理解して」と助言している。

見直しの時機は2回

 医療保険の見直しのタイミングについて、酒井さんにアドバイスをもらった。

 未加入なら、結婚が一つのきっかけ。「女性は妊娠・出産時にトラブルが起きることもありうる。男性も、子どもが生まれるタイミングなどに特に死亡保障については入っておくとよい」

 見直しのタイミングは大きく2回。まずは、住宅の購入時だという。

 「住宅ローンを組む際は、団体信用生命保険の特約を付けることがほとんど。万が一の際はローンの残高と相殺され、以後の返済が不要になるため、死亡保険は軽くしてもよい」。死亡保険の見直しで浮いた分を医療・がん保険に回して、3大疾病などへの備えを手厚くするのもいいだろう。

 次のタイミングは、子どもの独立など、自分の老後の備えを考える時だ。病気をした後では、保険に入れないリスクもある。「子の有無や結婚・未婚にかかわらず、55歳頃までに、重要性が下がる死亡保険の代わりに、医療保険で高齢期の入院代などに備えたい」

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