わたしのビタミン
医療・健康・介護のコラム
働く人の悩み「答えはその人が持っている」…解決を支援
日本産業カウンセラー協会会長…田中節子さん(67)
産業カウンセラーは、働く人を支える心の専門家です。「心の健康の一次窓口」だと考えています。働いている人が困ったときに、話に耳を傾けて解決を支援する。必要があれば、職場環境の改善を働きかけたり、医師などの専門家や公的機関につなげたりします。
大切にしているのは、「答えはその人が持っている」ということ。カウンセリングでやり取りをしながら、自分の悩みや問題点に気づき、解決する答えを見つけて変わっていく。その過程に立ち会えることに、やりがいを感じます。
元々、フリーでアナウンサーをしていました。その縁で、結婚を機に移り住んだ愛媛県の民放局で、長年にわたってテレビやラジオの企画や制作の仕事をしてきました。
育児に手がかからなくなると、何か社会貢献をしたいと考えるようになりました。そこで、心理学を勉強するために大学に入り直し、自分に何ができるのかをゆっくり考えました。
仕事でインタビューをすることも多かったので、人の話だったら聞けるかもしれない。そう思ったのが、産業カウンセラーの養成講座を受けたきっかけです。
しかし、講座でカウンセラー役をやってみて、ショックを受けました。悩みを抱えた相手に、どう応じていいのかわからなかったのです。
人の話を聞くのは自信がありました。しかし、カウンセリングの基本的なスキルは「傾聴」。私の感想や思ったことを話す場ではありません。相手の話をそのまま受け入れる必要があります。私自身、そのことに気づくまでが大変でした。
何に悩んでいるのか、本人が気づいていない場合もあります。自分の話を自分で整理しながら理解し、解決策を自分で考えていけるようにサポートしていかなければいけません。
コロナ禍でテレワークが増えました。会社に行かないため、不調に気づいてもらえず、相談できない人も多いと思います。こうした人をどう支援していくかが課題だと感じています。
最近はメンタル面だけでなく、キャリア形成の悩みも増えています。
毎年、日本産業カウンセラー協会で「働く人の電話相談室」を実施しているのですが、新型コロナウイルスの影響でテレワークが増え、自分に向き合う時間が増えたからでしょうか、キャリアに関する相談が多くなりました。
若い人に元気に仕事をしてもらえるようにするためにも、管理職ほど幸せな姿を見せられるような職場にしなければなりません。
仕事が楽しいと思えるような職場を増やすために、産業カウンセラーの存在をもっと知ってもらえるようにしていきたいと考えています。(聞き手・本田克樹)
たなか・せつこ 1953年、茨城県生まれ。シニア産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。2021年からは、3万人以上の会員がいる日本産業カウンセラー協会の会長を務める。管理栄養士の資格も持つ。
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