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常喜眞理「女のココロとカラダ講座」

医療・健康・介護のコラム

更年期に肝機能の数値が急上昇…自覚症状のない「沈黙の臓器」、健診で早期発見を

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更年期に肝機能の数値が急上昇 自覚症状のない「沈黙の臓器」、健診で異常を早期発見

 40歳代後半のFさんは人間ドックを受け、肝機能の数値に異常があり医療機関を受診するよう言われたと心配して来院された。自覚症状はまったくないという。肝臓はサイレント(沈黙の)臓器の一つで、支障があってもめったに自覚症状が出ない。

 Fさんの結果を拝見すると昨年までほぼ正常値であった肝機能の数値が、いずれも基準範囲の3~4倍に上昇していた。肝機能の数値は主にALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTP、ALPなどがある。

 ALT、ASTはアミノ酸を作るための酵素で、数値の上昇は主に肝臓細胞の壊れ具合を反映する。ASTは心臓や骨格筋にも含まれる酵素で、筋肉がダメージを受けると血液中に出てくるため、筋トレをした後に測定すると正常値の倍ほどに上昇することがある。マラソン大会に出場した翌日に人間ドックを受けると、ASTをはじめとする様々な数値が心筋 梗塞(こうそく) を発症したと間違われるほど上昇するので、健診の日程には気をつけてほしい。

女性に多い自己免疫疾患

 一方γ-GTP、ALPは肝臓で作られる胆汁という消化液が通る胆道に多く存在する酵素で、数値の上昇は主に胆道系の障害が予想される。ALPは骨にも多く存在する酵素で、成長期の子供や大人でも骨折により高くなる。また血液型がB型、O型の方は少し高いことが知られている。

 女性では更年期以降、女性ホルモン低下とともにALPが上昇しやすい。軽度の上昇なら心配ないが、基準範囲を大幅に超えるようなら、更年期以降の女性に多い原発性胆汁性胆管炎という病気があるため追加の検査が必要だ。この病気は自己免疫疾患の一つで、進行すると肝硬変となる。初期ではまったく自覚症状がない。血液検査で抗ミトコンドリア抗体(AMA)という自己抗体を調べ、肝臓の超音波やCT・MRIなど画像検査をすることである程度診断がつく。

内服薬で改善

 Fさんは抗ミトコンドリア抗体が陽性であったが、画像検査では大きな異常はなく、気になる症状もなかった。精密検査となる肝臓の組織検査は、一泊入院をして右脇腹に針を刺し肝臓の一部を採取するという方法のため、体に負担がかかる。Fさんはそれを望まなかったが、異常値を放置しない方がよいとアドバイスし、肝臓を守る薬の内服治療を開始した。幸いその治療で数値が改善した。体に負担のかかる薬ではないが、数値がよくなったからすぐにやめられるということではなく、定期的な血液や画像の検査が必要である。

 Fさんには早めの検査を受けてくれてよかったと話した。昔は女性が健診を受ける機会も少なく、病気の発見が遅れることもあった。現在は健診の機会も増え、早く見つかることが多く、早めの治療は予後も良い。自治体の健診ではALPが含まれないが、γ-GPTは含まれていて異常があれば次の検査につなげることができる。人間ドックを受診する機会のない方も、ぜひおっくうがらず自治体の健診を受けてほしい。(常喜眞理 医師)

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常喜 眞理(じょうき・まり)

 家庭医、医学博士
 1963年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医・指導医、内科学会認定医、日本医師会認定産業医。院長を務める常喜医院(内科、皮膚科)での診療のほか、慈恵医大新橋健診センターでは診療医長として健康診断(人間ドック)の内科診察を行い、婦人科や乳腺外科の診断を担当する。様々な大手企業の産業医でもあり、職場におけるメンタルヘルスのサポートを長年行っている。著書に『オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)、『お医者さんがやっている「加齢ゲーム」で若返る!』(さくら舎)。現在、BS-TBS「Together」に準レギュラー出演中。

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