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コロナ下の行動自粛が睡眠に影響

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 神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授の古谷真樹氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に対する緊急事態宣言発出(行動自粛)がメンタルヘルスと睡眠に及ぼす影響を検討。「行動自粛による情緒的孤独感は睡眠の質に直接影響し、抑うつ・不安があると、睡眠の質がさらに悪化する傾向にあった」と第46回日本睡眠学会(9月23~24日、ウェブ併催)で報告した。

メンタルヘルスが睡眠の質と強く関連

コロナ下の行動自粛が睡眠に影響

※画像はイメージです

 2020年1月ごろからCOVID-19の流行が拡大し始め、その後、各国でロックダウンや行動制限などの政策が取られてきた。日本でも緊急事態宣言が発出され、人と人との物理的な距離感を取ることが求められるようになった。誰かと何かを一緒にすることが難しく、これまでのストレス対処方法が適応しにくい状況になっている。

 国内では緊急事態宣言により行動自粛が要請されたが、不要不急の外出に対する罰金などのペナルティはない。しかし、例えばイタリアでは身元情報や住所、理由を記した書類を持たずに外出することが禁止され、所持していない場合には罰金が課せられる。そのため、メンタルヘルスや睡眠への影響が早くから指摘されていた。

 イタリアで最初のロックダウン期間の最後の2週間について、インターネット調査が行われた。1,515人(年齢中央値42歳)のデータを検討した結果、不安症状があるとの回答が23.2%、抑うつ症状は24.7%だった(Int J Environ Res Pub Health 2020 17:4779)。睡眠については42.2%がなんらかの問題を報告しており、そのうち17.4%は中等度~重度の睡眠障害だった。

 イタリアの別のインターネット調査では、若年労働者501人(年齢中央値26.0歳)と学生809人(同22.6歳)でロックダウン前とロックダウン開始1週間後のメンタルヘルスと睡眠について検討(J Sleep Res 2020;29:e13074)。ロックダウン中に全体で抑うつ症状は24.2%、不安症状は32.6%、ストレスは50.1%が報告していた( 図-A )。

図.ロックダウン中のメンタルヘルス(A)とロックダウン前後の睡眠の質(B)

コロナ下の行動自粛が睡眠に影響

(J Sleep Res 2020;29:e13074)

 ロックダウン後に睡眠時間は特に有職者で延長しており、睡眠の質が低い人〔ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)5点超〕の割合は全体で40.5%から52.4%に増加していた( 図-B )。学生では不安症状、抑うつ症状、ストレスが睡眠の質と強く関連しており、有職者では、主観的な時間の延長が睡眠の質と関連していた。

緊急事態宣言で3人に1人が睡眠の質低下

 これまで多くの調査で行動自粛時の睡眠やメンタルヘルスへの影響は示されているが、それらがどのように関連するのかについての検討は少ない。そこで古谷氏らは、COVID-19パンデミックによる行動自粛時(第1回緊急事態宣言下)の有職者の睡眠とメンタルヘルスの関連を検討。〈1〉自粛以前と自粛中で睡眠習慣は変化するのか、〈2〉行動自粛中のメンタルヘルスと関連する要因、〈3〉行動自粛中の睡眠の質に対するメンタルヘルスと背景因子の関連-を明らかにすることを目的に研究を行った。

 調査会社のモニター登録者のうち日本人成人1,000人を対象に、2020年5月18~21日(第1回緊急事態宣言発令期間の最終週)にウェブ調査を実施。調査内容は人口統計変数、睡眠の質(PSQI-J)、孤独感(DJGLS※1)、不安・抑うつ(HADS※2)で、緊急事態宣言前の睡眠の質についても回答してもらった。解析対象は512人(男性317人)で、フルタイム勤務353人(69.0%)、パートタイム・アルバイト102人(19.9%)、自営業/請負業者57人(11.1%)だった。

 検討の結果、緊急事態宣言中と宣言前の睡眠習慣の関係についての相関係数は、就寝時刻は平日、休日ともr=0.94といずれも高かった。起床時刻もそれぞれr=0.92、r=0.90と高く、睡眠時間はr=0.85、r=0.77で、若干ばらつきが見られた。PSQIグローバルスコアは平均4.95点で、宣言解除直前に以前より睡眠の質が低下していたのは35.8%と、3人に1人が睡眠の質低下を報告していた。

睡眠教育だけでなく心理的要因への介入も必要

 孤独感については、社会的孤独感(ネットワーク、人脈の乏しさに起因する)はDJGLSで平均2.4点、情緒的孤独感(親密な関係の人がいないことに起因する)は平均1.2点で、社会的孤独感の方が高かった。この結果から、誰かと会えないことによる孤独感が高まっている状況が示された。

 メンタルヘルスに影響を及ぼす要因を検討したところ、不安には情緒的孤独感、社会的孤独感、婚姻状況、コロナ以前からある精神疾患が関連していた。また、情緒的孤独感、社会的孤独感があると抑うつ傾向は高く、既婚者やフルタイムワーカーでは抑うつが抑制されており、若年者で抑うつ傾向は高かった。

 古谷氏らは、不安、抑うつと関連する要因が睡眠の質に及ぼす影響を媒介分析によって検討。社会的孤独感から睡眠の質への直接的な影響はなかった一方で、間接的影響は有意であり、社会的孤独感から不安や抑うつを経て睡眠の悪化に影響したことが示された。情緒的孤独感から睡眠の質への直接的な影響は有意で、抑うつ、不安の媒介効果も示され、情緒的孤独感があり、かつ抑うつ・不安があると、さらに睡眠の質が悪化する傾向が見られた。

 同氏は「親しい人と会えないことによる孤独感は、直接睡眠の質を低下させる」と指摘。「今回の結果から、有職者への睡眠教育は重要だが、それに加えて心理的要因への介入を行う必要性があると示唆された」と述べた。

  1. ※1 de Jong-Giervel孤独スケール(0~3点)
  2. ※2 Hospital Anxiety and Depression Scale(不安と抑うつの評価尺度、0~18点)

(慶野 永)

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