文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

スポーツDr.大関の「ムーヴ・オン!」

医療・健康・介護のコラム

サッカーの久保建英選手、内田篤人選手も悩まされた膝の痛み。育ち盛りの小学生の場合は

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

ポイントゲッターのフォワード選手だった小学生が

 さて、以前、成長期のスポーツ選手の膝の痛みで最も頻度の高い「 オスグッド病 」について書きましたが、今回は別の事例を紹介します。

 中学1年生のB君は、幼いころからサッカーに熱中してきました。

 走ることが得意で、ボールの扱いもうまく、小学校の低学年時代から、所属クラブチームではポイントゲッターのフォワード選手として活躍してきました。ところが、高学年になると、時々膝の痛みを感じるようになりました。サッカーの場合、ボールの動きに合わせて、いきなりトップスピードでの動き出しを求められることが多く、膝や足首などにかかる負担はとても大きいのです。B君はだましだまししながらも、なんとかプレーを続けることはできていました。

 やがて中学生になり、迷わずサッカー部に入部したB君でしたが、練習はほぼ毎日になりました。週3回、ゲーム形式のプレーがほとんどだった小学生時代とは異なり、ランニングや基礎トレーニングの時間が増え、下半身への負担も大きくなっていきました。

 それに伴って、膝の痛みがひどくなり、とうとう日常生活にも影響が出るようになってしまいました。自宅の階段を痛そうに下りているB君を見た母親がびっくりして、「膝をかばって歩くほど痛いの?」と尋ねました。

 B君を座らせて、両膝を見比べると、片方の膝の前の部位が少し腫れているようです。「ここ、腫れているんじゃないの?」と軽く押してみると、思わずのけぞるほどの痛みを訴えました。

 まだ中学生になったばかり。心配になった母親は、私が勤務していた整形外科に息子を連れてやってきました。

本来、つながっている骨が…

 問診をした後、痛みの程度を知るために、B君に膝の屈伸動作をしてもらいました。ところが、痛みのため最後まで曲がりません。スクワットの動作を見ても、やはり深く沈みこむことは困難な様子です。そこでベッドに寝てもらって、右膝の腫れた部位を押してみたら、とても痛がりました。明らかにまともに走れる状態ではありませんでした。

 思わず、私は「これでよくサッカーの練習をしてきたね」と口にしました。

 X線検査の画像を見ると、膝のお皿の骨である膝蓋骨の一部が分裂しているのがはっきり見られました。超音波検査では、痛みのある場所に通常では見られない小さな血管がたくさん観察されました。この部分に炎症がある証拠です。

 診断名は「 分裂膝蓋骨(しつがいこつ) 」です。

サッカーの久保建英選手、内田篤人選手も悩まされた膝の痛み。育ち盛りの小学生の場合は

 例えば、腕で脚部でも、骨折した部分のX線画像を見ると、つながっているはずの骨が離れて見えます。「分裂膝蓋骨」の場合も、骨は離れた状態になっていますが、単純骨折のケースとは異なり、外からの力で一気に受傷したものではありません。

 成長していくにつれて膝蓋骨に付着している大腿四頭筋の一つ、「外側広筋」に日常的な運動の負荷が蓄積され、本来は一つの骨になるはずの部分が離れたままになった状態を指します。成長期の子どもに多く見られる症状です。

 不思議なことに、この状態になっても痛みを感じない子どももいます。

2 / 4

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

oozeki-nobutake_prof

大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

過去コラムはこちら

スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

スポーツDr.大関の「ムーヴ・オン!」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事