スポーツDr.大関の「ムーヴ・オン!」
医療・健康・介護のコラム
サッカーの久保建英選手、内田篤人選手も悩まされた膝の痛み。育ち盛りの小学生の場合は
ポイントゲッターのフォワード選手だった小学生が
さて、以前、成長期のスポーツ選手の膝の痛みで最も頻度の高い「 オスグッド病 」について書きましたが、今回は別の事例を紹介します。
中学1年生のB君は、幼いころからサッカーに熱中してきました。
走ることが得意で、ボールの扱いもうまく、小学校の低学年時代から、所属クラブチームではポイントゲッターのフォワード選手として活躍してきました。ところが、高学年になると、時々膝の痛みを感じるようになりました。サッカーの場合、ボールの動きに合わせて、いきなりトップスピードでの動き出しを求められることが多く、膝や足首などにかかる負担はとても大きいのです。B君はだましだまししながらも、なんとかプレーを続けることはできていました。
やがて中学生になり、迷わずサッカー部に入部したB君でしたが、練習はほぼ毎日になりました。週3回、ゲーム形式のプレーがほとんどだった小学生時代とは異なり、ランニングや基礎トレーニングの時間が増え、下半身への負担も大きくなっていきました。
それに伴って、膝の痛みがひどくなり、とうとう日常生活にも影響が出るようになってしまいました。自宅の階段を痛そうに下りているB君を見た母親がびっくりして、「膝をかばって歩くほど痛いの?」と尋ねました。
B君を座らせて、両膝を見比べると、片方の膝の前の部位が少し腫れているようです。「ここ、腫れているんじゃないの?」と軽く押してみると、思わずのけぞるほどの痛みを訴えました。
まだ中学生になったばかり。心配になった母親は、私が勤務していた整形外科に息子を連れてやってきました。
本来、つながっている骨が…
問診をした後、痛みの程度を知るために、B君に膝の屈伸動作をしてもらいました。ところが、痛みのため最後まで曲がりません。スクワットの動作を見ても、やはり深く沈みこむことは困難な様子です。そこでベッドに寝てもらって、右膝の腫れた部位を押してみたら、とても痛がりました。明らかにまともに走れる状態ではありませんでした。
思わず、私は「これでよくサッカーの練習をしてきたね」と口にしました。
X線検査の画像を見ると、膝のお皿の骨である膝蓋骨の一部が分裂しているのがはっきり見られました。超音波検査では、痛みのある場所に通常では見られない小さな血管がたくさん観察されました。この部分に炎症がある証拠です。
診断名は「 分裂膝蓋骨 」です。
例えば、腕で脚部でも、骨折した部分のX線画像を見ると、つながっているはずの骨が離れて見えます。「分裂膝蓋骨」の場合も、骨は離れた状態になっていますが、単純骨折のケースとは異なり、外からの力で一気に受傷したものではありません。
成長していくにつれて膝蓋骨に付着している大腿四頭筋の一つ、「外側広筋」に日常的な運動の負荷が蓄積され、本来は一つの骨になるはずの部分が離れたままになった状態を指します。成長期の子どもに多く見られる症状です。
不思議なことに、この状態になっても痛みを感じない子どももいます。
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