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東ちづる 山あり谷ありダイアリー

医療・健康・介護のコラム

この小さな点が胃がんなの!? よく見つけてくださいました…医師に感謝と質問攻めの「インフォームド・コンセント」

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録音や録画をオススメします

 私は活動の中で、患者さんやご家族には、「インフォームド・コンセントの際には、医療従事者さんの許可を取って、録音か録画をしておくといいですよ。あとから何回でも確認できますから」と提案しています。「もし、拒否をするお医者さんがいたら、その理由を伺ってみてくださいね」と。

 「先生のお顔は映らないようにしますから」「なんだー、化粧直ししたのにー」なんて、冗談で返してくれるお医者さんだといいですよね。

 もちろん私の場合も録画しました。モニターに映し出された私の胃も、胃潰瘍もバッチリと。「この小さな赤い点が、胃がんの疑いがあるところです」「えええ!? こんな小さいんですか? よく見つけてくださいましたね。ありがとうございます」。こんな感じでした。

 そして、母や妹、夫に、録画した映像をそのままLINEで送ったのです。専門用語は検索しながら見たそうです。

 妹からは「長いわー。いっぺんに見るのしんどかったワー」とちょっと愚痴られましたが。でもそれって、丁寧な説明ということですよね。

 お医者さんからは、「堀川さん(私の本名)のように、こんなに質問を受けることはめったにないですよ。はい、わかりました、先生にお任せします、という患者さんが多いですからねぇ」と、笑われてしまいました。そして、「患者さんの本音や不安もよくわかりました。ありがとうございました」とも言われました。いい先生です。

援助する側・される側が尊重し合う

 患者側が不安を抱えたままでは、医療側との信頼関係を構築することは難しくなります。ささいなことでも我慢したりすると、自分の中で抑えていた不満が増殖します。それは、免疫力にも影響する気がしますし、入院生活もつらくなるものです。

 インフォームド・コンセントを大切にすることは、自分の体、自分の人生に責任を持つこと、尊厳を守ることだと思っています。患者の知る権利を尊重してもらったうえで、患者自身が治療法を決めていくのですから。

 しっかりとインフォームドコンセントで治療法を決めてからの入院期間は、看護師さんたちとも信頼し合いたいと思っていました。

 こんなこともありました。看護師さんに、「ちょっとだけ時間ください。これ聴いて。今制作している映像作品で歌ってもらおうと思ってるの。このシーンにあうかなあ?」と、一緒に平原綾香さんの「Jupiter」を聴いてもらったのです。看護師さんは聴きながら少し涙して、「コロナ禍で勤務が大変で……実は、心がすさんでたんです。ありがとうございました」と。「また聴きましょ。癒やしの音楽、そろえておきますワ~」と笑い合いました。

 援助する側とされる側という役割関係ではありますが、互いに尊重する対等な関係でありたいですよね。

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東ちづる(あずま・ちづる)

俳優。 一般社団法人Get in touch代表。 広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマ出演や司会、講演、出版など幅広く活躍。骨髄バンク支援等のボランティアを30年間続けている。2012年、アートや音楽、映像、舞台等を通じて、誰もが自分らしく生きられる“まぜこぜの社会”を目指す一般社団法人 Get in touchを設立。記録映画「私はワタシ over the rainbow」、演劇プロジェクト「月夜のからくりハウス」(ともに動画をVimeoで配信中)などの企画・プロデュースを手がけ、自らも出演している。『東京2020NIPPONフェスティバル』のひとつとして世界に配信される「MAZEKOZEアイランドツアー」(無料配信中)の総合構成・演出・総指揮を担当。著書に、母との葛藤を乗り越えるまでの体験を綴った『〈私〉はなぜカウンセリングを受けたのか~「いい人、やめた!」母と娘の挑戦』、エッセー集『らいふ』など。

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