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現場守るため「空き病床」過少報告、「幽霊病床」と言われるとつらい…[第6波に備えて]<上>

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 新型コロナウイルス感染の「第6波」に向けて、政府や自治体は今月、病床確保の計画を見直した。「必要な人がきちんと入院できる体制」を作るためだ。今夏の第5波では、症状が悪化しても入院できずに自宅療養中に命を落とす人が相次いだ。今度は本当に患者を救えるのか。計画の実効性を探る。

人工呼吸器なし

現場守るため「空き病床」過少報告、「幽霊病床」と言われるとつらい…[第6波に備えて]<上>

第5波では、コロナ患者の入院制限でベッドが空く事態も起きた(東京都内で)

 「この夏、都には、空き病床の数を実際よりも少なく報告していた」

 東京都内の中規模病院幹部は打ち明ける。コロナ患者を受け入れている各病院は、毎朝、空き病床数を都に報告する。この病院では、5床空いていても、「2床」と記したことがあるという。

 残り3床は、コロナ病床として確保しているのに、使われない。「でもこれを、『幽霊病床』なんて言われるとつらい。現場を守るための苦渋の判断だった」と、幹部は訴える。

 空き病床を過少申告したのは、看護師不足が起きないようにするためだ。この病院はもともと軽症・中等症の担当で、入院患者が重症化すれば大学病院などに転院させるはずだった。しかし第5波で、都内の重症病床は満床状態に。重症者が転院できず、自分たちで診るしかなくなった。

 人工呼吸器を装着した重症者の対応には、より多くの看護師が必要になる。「院内でさらに重症者が増えた時に備えて余力を残しておかねばパンクすると考えた」と幹部は説明する。

 地域の基幹病院として軽症・中等症患者を担当する東京北医療センター(東京都北区)も、重症化した入院患者の転院先が見つからず、7月下旬、院内のコロナ病床約40床のうち約20床で新規患者の受け入れを打ち切った。

 「数台しかない人工呼吸器をすべて使う事態となり、選択肢は入院制限しかなかった」と同センターの管理者を務める宮崎国久医師は話す。

 一方で、「確保病床数」を実態に合わせて減らすことを都に打診したところ、「現状維持で頑張ってほしい」と言われ、使えない20床はそのままコロナ患者向けの確保病床として計上され続けた。結果として、同センターでは病床使用率が50%前後の状況が続いた。

現場とズレ

 政府は今月12日、コロナ感染の第6波に備えた総合対策を発表した。そこでは「最悪の事態」として、〈1〉今夏(第5波)の2倍程度の感染力のウイルスが流行すると想定している。

 ただ、〈2〉夏に比べてワクチン接種が進み、感染する人は減る――ともみている。〈1〉と〈2〉で相殺され、第6波も第5波とほぼ同じ感染規模になるという前提のもと、必要な人が確実に入院できるよう、都道府県に病床の確保を要請した。

 東京都は、第6波では「最大5857人が入院できる体制を作る」という計画を立てた。第5波より約1500人増えるが、このうち約1000人分は新たにベッドを増やすのではなく、夏に積み上げた各病院の病床の使用率を向上させることで確保を見込む。

 第5波の都内のコロナ病床の使用率は最大で68%だった。これを第6波では、85%まで引き上げるという。

 その一方で、都は、「抗体カクテル療法」の導入などで重症化が抑えられるとして、重症病床は第5波(9月中旬)の503床から増やさない予定だ。

 夏よりも感染力の強いウイルスが 蔓延まんえん すれば、ワクチン未接種者らの間で感染が広がり、少なからず重症者が出る可能性はある。重症病床を増やして円滑な入院・転院調整の実現を望む医療現場と、都との距離感は、縮まっていない。

 「使用率を8割以上にするには、重症病床を増やすことが不可欠だ。今のままでは、第6波でも使えない病床が残ってしまう」と宮崎医師は危惧している。

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