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ドライブ大好き 免許返納を拒み…頑なな父を納得させた娘の行動とは?

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 84歳の父親が運転免許証を返納してくれず、事故を起こさないか不安で仕方がない――。そんな悩みを持つ大阪府内の女性の話を10月17日に紹介すると、読者から LINEライン などで多くの体験談や意見を寄せていただきました。

 過去に同じ問題に直面し、「親を説得したが、聞き入れてもらえなかった」という声が目立ちました。

免許返納父と私が見た景色

香代美さんが父親とドライブした海辺の風景(香代美さん提供)

 高齢ドライバーによる事故が起きると、「家族が止められなかったのか」という意見を耳にすることもあります。家族が責められているように感じ、「難しい事情を理解してほしい」との思いを抱える人もいました。

 そんな中に「苦労はあったが、亡き父との思い出ができた」という前向きな言葉もありました。投稿した広島県の香代美さん(65)に詳しく話を聞きました。

 香代美さんの母親は若い頃に亡くなっており、父親は定年退職後、友人と車で全国を旅行するのが趣味でした。ドライブが大好きで、広島の自宅から北海道まで行くこともあったそうです。

 香代美さんは少し離れた場所で暮らしており、会うのは正月など年に数回でした。しかし、父親は88歳の時、赤信号で交差点に進入し、接触事故を起こします。幸い誰もけがはしませんでしたが、父親は「信号は赤じゃなかった」と言い張りました。

 返納を拒み、「楽しみを奪われる」と言う父親。香代美さんは覚悟を決め、数か月かけて説得しました。

 「行きたいところがあれば、私がどこでも連れて行く」

 その言葉を受け入れた父親を毎週、助手席に乗せてスーパーへ買い物に行く生活が始まりました。父親が好きだった映画館や銭湯にもよく足を運び、瀬戸内海沿いをドライブしました。香代美さんの夫が北陸や九州へ旅行に連れ出すこともありました。

 父親が亡くなったのは2年後の昨年春のことでした。今も香代美さんの目に浮かぶのは、助手席で楽しそうに昔話をする父親の顔です。

 「最後に親子の時間をたくさん作れた。父も納得してくれていたと思います」

 前回の記事には、高齢ドライバーと思われる方からの意見も届きました。「高齢というだけで危ないと言われる風潮に納得できない」という声もありました。

 79歳の女性は「運転時の反応が遅くなっている」と自覚しつつも、身体障害がある娘の世話をするために車が必要だとつづっていました。

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 運転を続けるか、やめるか。人それぞれの事情や価値観があり、ひとくくりにして「こうすべきだ」と言える話ではないのでしょう。

 確かに返納は「できていたことができなくなる」ということです。それでも香代美さんの体験談からは、本人にとっても家族にとっても、必ずしもマイナス面ばかりではないと気付かされます。

 何かができなくなった分、新しく何かができるかもしれない。考え方を切り替えれば、想像していた返納後の景色が少し違って見えてくることもある。そう感じました。

今回の担当は

 中瀬有紀(なかせ・ゆき) 記者になる直前に免許を取得。最初に赴任した松江支局での3年間は、中古の日産マーチで取材に行った。

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 〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「言わせて」係

 iwasete@yomiuri.com

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