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医療・健康・介護のコラム
「あなたは不妊です」と言われない曖昧さとの闘い…原因不明不妊に悩んだ6年
Aさんは27歳で一つ年上の夫と結婚しました。当時の仕事は客室乗務員。勤務先の会社には手厚い制度があり、妊娠がわかったその瞬間から産休に入ることができ、子どもが3歳になるまで産育休を取ることもできました。
ですから結婚後は「在職中に妊娠できれば、仕事を辞めずに転勤族の夫についていける」と算段していましたが、すぐには妊娠できなかったため、その願いはかなわず、仕事を辞めて夫の転勤についていくことにしました。その時は「ちょっと残念」くらいの気持ちで、まさか、その後6年間も不妊に悩むなんて想像もしていなかったそうです。
子どもについては結婚当初から、夫と「ほしいね」という意思確認を互いにしていたし、そして「もし子どものいない人生だったら……」ということも、きちんと考えていて、そのことが、その先のつらい日々に生きたと感じる、と言います。
結婚後2年過ぎても妊娠せず 医師は「若いからだいじょうぶ」
結婚後1年たってもAさんに妊娠の兆候はなく、近所の病院へブライダルチェックに行きました。そこで風疹の抗体が少ないことがわかり、予防接種を受けたのですが、内診では「きれいな子宮ね」と言われて安心しました。風疹の予防接種後はしばらく避妊し、その後、妊活再開。それでもやはり妊娠しません。
結婚後2年が過ぎ、「やっぱりもう一度病院に行ってみよう。何か赤ちゃんができない原因があるなら知りたい」と夫婦で話し合いました。当時の住まいは北海道で、有名な不妊治療専門クリニックに問い合わせてみると、初診までかなり待つといわれました。それならばと、近所の「婦人科」に行き、そこで一通りの検査を受けたのですが、結局、原因はわからずじまい。これといった不妊の原因がないのです。ホルモンは正常範囲、内膜症もないし、子宮も卵巣も卵管も問題なし。医師からは「あなたはまだ若いんだから大丈夫ですよ」と言われて帰ってきました。
原因がない、でも赤ちゃんはできない……。結局、Aさんは、医師の「大丈夫」という言葉を信じて、その「婦人科」に1年以上通院しました。その間、人工授精までの治療を受けたのですが、それでも妊娠はできませんでした。その後、夫の転勤で東京へ戻ることになり、そのタイミングで再就職しました。
Aさんは「東京に戻ったら高度生殖医療についても視野に入れよう」と夫と話し合いました。自己タイミング、妊活を始めてすでに丸3年がたっていて、気持ちにあせりもありました。そこで超有名クリニックの門をたたき、初診の日までの3か月を心待ちにしました。
腹腔鏡検査でも原因ははっきりせず
いよいよ初診の時、やはり「あなたはまだ若いから」と言われたのですが、しかし、その後の言葉は「大丈夫」ではなく、「まずは腹腔鏡検査をしてみませんか」という提案でした。「さらに詳しく検査をしてもらえる、原因がわかるかもしれないと思うと、これまで長年の見えない霧が晴れるようでうれしくて……。『検査は全身麻酔で行うけど大丈夫ですか』と言われたんですが、原因不明の曖昧さから逃れられるなら何でもやろうという気持ちでした」
その検査は日帰り入院で行うので、会社を1日休む必要がありました。幸い「リフレッシュ休暇」というものが使えて、「婦人科系の検査をする」ということで休みが取れました。腹腔鏡検査では、おなかに3か所の小さな穴をあけて検査をします。すると、Aさんの期待通り、今まで見えてなかった「不妊の原因かもしれないもの」が見えてきました!
腹水が多いこと、内膜症がちらほらあったこと、そしてそれを検査中に焼いてもらえたこと。もちろん、それが今までの不妊の直接的な原因かどうかはわからず、まだ、曖昧なままです。「でも、おなかに穴をあけてまで検査をして、ようやく、その曖昧さを受け入れることができたように思います」。Aさんは、原因がわからないことが原因なのだということを受け入れたのでした。
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