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妊娠・育児・性の悩み

「あなたは不妊です」と言われない曖昧さとの闘い…原因不明不妊に悩んだ6年

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実はよくある「原因不明不妊」 打つ手なし

「あなたは不妊です」と言われない曖昧さとの闘い…原因不明不妊に悩んだ6年

 この「原因不明不妊」は実はよくあることです。たとえば体外受精まで行っても、妊娠・出産に至らない場合は、結局、「着床不全」あるいは「原因はわからない」とされることも多いのです。そうなると当事者としては、どうしたらよいか打つ手がなくなり、本当につらい気持ちになるものです。

 一般的に、腹腔鏡検査を受けると、その後は「ゴールデンタイム」という「妊娠しやすい時期」とされています。Aさんはその間、タイミング法を取ったのですが、4周期たってもやっぱり妊娠しません。その後、卵管内人工授精を1度試みましたが、その結果も残念ながら陰性。このころから、激務の夫の精子所見が、基準値内の時と、あまりよくない時との差が出てくるようになってしまいました。Aさんの不安が大きくなり、ついに次の治療に進む決意をしました。

 体外受精にステップアップするにあたり、Aさんが悩んだのが「会社に治療のことを言うかどうか」でした。しかし、どんな通院スケジュールになるかわからないし、急な休みで迷惑をかけるのは避けたいと思い、チームの先輩には伝えることにしました。幸いにも先輩から「私は独身だから、心情は計り知れないけれど、話してくれてありがとう。どんなサポートが必要かわからないから、何でも言ってね」と言ってもらえたことで心からほっとしたそうです。

 それでも不妊治療と仕事の両立はやはり大変で、「会社がフレックスタイム制であること、休みが柔軟に取りやすいこと、同僚に理解があることがそろって初めて、両立ができるのだと実感しました」と語りました。

体外受精で妊娠するも10週で流産

 初めての体外受精では、通院の回数を減らすために自己注射をして、採卵では5個の成熟卵と2個の未熟卵が取れました。夫の精子の運動率が、この時あまり良くなかったため、顕微授精をして、7個の採卵中、2個を凍結することができました。Aさんの期待は大いに膨らみ、いよいよ妊娠が近づいてきたことを感じていました。残念ながら1回目では妊娠できなかったのですが、2回目の胚移植で妊娠することができました!

 ところが、Aさん夫妻の喜びもつかの間、10週で繋留けいりゅう流産となってしまったのです。「本当につらかった。泣いて、泣いて、泣きまくって……。しばらく何をする気も起きませんでした」。そんなAさんの救いとなったのは、夫の存在だったといいます。

 「私の初めてのピア・カウンセラーは夫です。やっとの思いで授かった子どもだったのに、流産となってしまい、つらくてたまらなかったころ、私が何度同じ話をしても、何度同じことで泣いても、決してせかさず、一緒にその悲しみにとどまってくれました。そのことが本当にありがたかった。私が苦しむ姿を見ていた夫からは、特別養子縁組という選択肢もあるよとも教えてもらいました。ただ、今でこそ“血のつながりよりも大切なものがある”“人と人をつないでいるのは血縁ではない、絆だ”と思えるのですが、その時の私はまだ、それを受け入れることはできなかったです」

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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