介護のキホン
医療・健康・介護のコラム
住み慣れたわが家で暮らしたい…ニーズに応じ「通い」「訪問」「宿泊」サービス 小規模多機能型居宅介護とは?
住み慣れた自宅や地域で暮らし続けるための介護サービスに、「小規模多機能型居宅介護」(小規模多機能)があります。施設への「通い」を中心に、自宅への「訪問」、一時的な「宿泊」を、ニーズに応じて柔軟に組み合わせて利用できるのが特徴です。

介護サービスの利用者は通常、デイサービスや訪問介護、ショートステイをそれぞれの事業所と契約します。これに対し、小規模多機能は、通い、訪問、宿泊の各サービスを一つの事業所が提供します。
東京都世田谷区の「 優 っくり小規模多機能介護下馬」には近くの団地などから利用者が通ってきます。決まった予定は食事前の体操くらいで、思い思いにやりたいことをして過ごしています。
塗り絵や脳トレに取り組む人もいれば、入浴を済ませてさっぱりした表情の人も。スタッフと買い物や散歩に出かけることもでき、天気が良ければ、気分転換のドライブで遠出することもあるといいます。「コロナ禍で美容院に行きにくい」という利用者の声で、施設で訪問理美容を受けられる時間も設けました。
施設を運営する社会福祉法人奉優会の丸山めい・小多機事業部長は「一人暮らしや認知症の人も増える中、利用者のペースに合わせて住み慣れた地域で長く住めるような支援がしたい」と話します。

顔なじみの職員と、宿泊で利用する居室の寝具を整える利用者(東京都世田谷区で)
小規模多機能の施設の標準的な登録定員は29人。原則、1日に利用できる定員は、通いはその2分の1程度、宿泊は3分の1程度です。通いの場合、利用者3人に対して職員1人が付く形です。小規模の、自宅に近いような環境で、顔なじみの職員が生活を手助けしてくれるイメージです。
受けるサービスの中身を細かく決めておく必要がないため、介護を担う家族の残業や体調不良などで自宅にいられない場合に、急きょ、宿泊を入れるといった使い方も可能です。調理やゴミ出し、服薬管理など、短時間の訪問サービスを依頼できる点も強みです。 看取 りに対応してくれる施設もあります。
基本的な利用料は要介護度に応じた定額制です。自己負担が1割の人なら、1か月の負担額は「要支援1」で約3400円、「要介護5」で約2万7000円です(地域によって1割ほど高くなる場合があります)。ただし、食事代や宿泊費、外出や外食などレクリエーションの参加費は利用料とは別に必要です。
柔軟性の高い「オーダーメイドの介護」とも言える小規模多機能ですが、サービスを提供する事業所は全国に約5500か所と限られます。身近な施設の情報については、自治体の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに問い合わせるとよいでしょう。
利用を検討する際は、施設を見学しましょう。全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会(東京都港区)の山越孝浩事務局長は「家族だけでなく、利用者本人が自分の目で見て、雰囲気などを体感してほしい。その場で自分の状況に合わせたどんな利用の仕方ができるかを聞くことも大切です」と呼びかけています。
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