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宮脇敦士「医療ビッグデータから見えてくるもの」

医療・健康・介護のコラム

医療政策に活用する際の落とし穴 オバマケア「再入院予防プログラム」から学ぶべきこと

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再入院率の高い病院をデータで割り出しペナルティー

 オバマケアは、無保険の人を減らすために医療保険の対象を拡大したことで有名ですが、他にも様々な政策が行われました。その一つが、病院の医療の質を上げる目的で行われた「再入院予防プログラム」です。

 背景として、米国の医療制度のもとでは、入院は何日しても、病院の収入は定額になっていることがあります。そのため、不十分な治療で、十分に退院後のフォローアップのめどがついていないにもかかわらず、早期に退院させるなどの問題が起こっていました。

 それらの不十分な質の悪い医療によって起こる「再入院」は、本来きちんと医療を行っていれば起こらなかったはずのものであり、米国の高い医療費の一因と考えられていました。

 そこで、オバマケア(正式名称 Patient Protection and Affordable Care Act)では、この再入院予防プログラムが始まりました。

 この制度は、心不全や肺炎を始めとした6~7種類の、よく病院で治療される疾患に対して、患者再入院率の高い病院を医療ビッグデータを用いることで割り出し、それらの病院についてメディケアという(半分国営の)保険組合が金銭的ペナルティー(保険組合から病院に払うお金を減らす)をかけるというものでした。

病院が再入院を拒んだ結果 死亡率はかえって上昇

 もちろん、病院も様々で、何もしなければ重症の患者さんや高齢の患者さんを多く診ている病院は、不利になってしまいます。

 そこで、患者さんの性別や年齢、人種、どのような病気を持っているか(=リスク)を、統計学的な方法で揃えた「リスク調整再入院率」を計算して、比較することにしました。これにより、ペナルティーを払うのが嫌な病院は、再入院率を下げるために、入院している患者さんによりよい医療を提供する……はずでした。

 では、実際にはどうなったでしょうか?

 確かに当初の目的通り、リスク調整再入院率は下がったようです(Fonarow et al.,JACC,2017)。けれども、心不全・肺炎の退院後30日以内の死亡率は上昇してしまいました(Wadhera et al.,2018,JAMA)。

 これは、再入院を病院が拒否したことが原因の一つとして考えられています。再入院できない患者さんは救急外来に行かざるを得なかったのです。

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宮脇 敦士(みやわき・あつし)

 2013年、東京大学医学部医学科卒業、医師免許取得。せんぽ東京高輪病院・東京大学医学部附属病院で初期研修後、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻にて、医療政策・応用統計を専攻し、19年に博士号取得。東京大学特任研究員、筑波大学研究員、日本学術振興会特別研究員、Harvard T.H. Chan School of Public Health 客員研究員などを経て、20年から東京大学大学院医学系研究科社会予防医学講座助教。大規模データを用いて良質な医療を皆に届けるにはどうすればよいかということを研究している。

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