文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

人はどうして痛いと大きな声をあげるのか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

痛い時に聴くなら「津軽海峡冬景色」がベスト!?

 聴覚鎮痛法の実践として、音楽を聴くのも良い。私の恩師、大阪医科大学麻酔科の兵頭正義教授の研究では、「日本人の痛みを癒すのは演歌や民謡が最適である」としている。なかでも石川さゆりさんの「津軽海峡冬景色」がベストであった。私の個人的な好みは「風の盆恋歌」だが……。

 事実、これらの曲を解析してみると、小川のせせらぎやそよ風と同じリラクゼーションをもたらす「1/fゆらぎ」と呼ばれるリズムが隠れていることがわかっている。これが、痛みを軽くするのである。

 一方で、笑うことでも痛みは軽くなる。泣いてばかりはいられない。

 日本医科大学リウマチ科の研究では、「関節リウマチ」の痛みに悩んでおられる女性患者さんらと健康女性らに林家木久蔵(現・木久扇)師匠の落語を聴いてもらい、その後、リウマチを悪化させる因子である炎症性サイトカインを測定した。その結果、患者さんの数値が健康女性に近づいていたのである。

 そして、痛みを軽くするもうひとつの極意がある。

 痛みには真正面から 対峙(たいじ) しないこと。つまり、意識を集中しないことである。「知らんぷり」こそが痛みの「自己緩和法」の実践。哲学者カントが、痛風の痛みから逃れるために、他のことに意識を集中したことは有名だ。

 痛けりゃ、「大声あげてあんあんと」泣けば良い。落語を聴いて笑い転げるのも良い。それでも駄目なら、ペインクリニックを受診されることをお勧めしておこう。(森本昌宏 麻酔科医)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

morimoto-masahiro

森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

森本昌宏「痛みの医学事典」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事