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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

4歳児は10センチのすき間でもすり抜ける…柵があっても起き続ける転落事故を防ぐには?

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検証実験で示されたもの

 20年くらい前に、高所からの幼児の転落について、子どもの身長別に三つのグループに分けて実験が行われました。

  1. ベランダや窓付近には台になるものが置かれていることが多く、これに幼児がよじ登り、外部に転落する。台をどの程度の高さまでよじ登ることができるか、台の高さ、大きさを変えて計測
  2. ベランダなどには、幼児が足をかけてよじ登ることができる「足掛かり」となるものがある。足掛かりの高さ、および厚さ(少し手前に飛び出している部分)を変えて計測
  3. 柵を乗り越えることができるかを、足先からベランダ柵までの水平距離と床高を変えて計測(ベランダに設置されている室外機に上り、そこからベランダの柵まで届くかどうか)

 東京都でも同様の調査が行われ、手すり柵の高さは現行規定の1100ミリ以上から1200ミリ以上に変えるべきであること、足掛かりの厚さは10ミリでも、そこに足をかけてよじ登ることが確認されたので、足や指が入らない、引っかからない形状にする必要があること、また、エアコンの室外機は、手すりから60センチ以上離すか、上からつるすことが必要と指摘されています。

 これらの結果から、現行の柵の高さだけの基準に、足掛かりとなるものの基準値も追加すべきと思います。これらの基準値を法制化すること、東京都の報告書で提案されている安全基準にすべて合致している住居は「幼児向け安全住宅」のような表示をして、消費者にわかりやすい認定制度を作ることも必要だと思います。

変えられるものを見つけ、変えること

 3年前に、東京都商品等安全対策協議会で、ベランダからの子どもの転落について詳細な検討が行われ、具体的な対策も示されているのに、その後も転落事故が起こり続けているのは遺憾です。ベランダにはいろいろな形状があること、構造物のため改良が難しいこと、ベランダや窓の下に置くものは各家庭で異なっていることなどのために対策が進まないのだと思いますが、発生状況のデータの中から、変えられるものを見つけ、それを変えないと予防にはつながりません。

 今回紹介した、子どもの身体寸法、身体能力のデータを、誰でも活用しやすいようにし、高所から転落した事例の身体計測値、転落した場所の計測値、転落直前の「推測される行動」などを記録し、これらをデータベース化して公開する必要があります。データが蓄積されれば基準値を設定することができ、ガイドライン、あるいは規格化することが可能になります。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

資料
  1. 持丸正明、山中龍宏、西田佳史、河内まき子編:子ども計測ハンドブック。朝倉書店、東京、2013年 pp27-39
  2. 金井宏水編:子どものからだ図鑑-キッズデザイン実践のためのデータブック。ワークスコーポレーション、東京、2013年

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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