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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

4歳児は10センチのすき間でもすり抜ける…柵があっても起き続ける転落事故を防ぐには?

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 前回は、同じような転落事故が同じように起こり続けていること、その原因は、転落が発生したときの状況がわからないためであると指摘しました。細胞や動物を使う研究では、何度でも再現実験をすることができますが、傷害についてヒトを使って再現実験をすることはできません。そこで、いろいろな状況を設定して、発生状況のシミュレーションを行うことになります。

4歳児は10センチのすき間でもすり抜ける…柵があっても起き続ける転落事故を防ぐには?

イラスト:高橋まや

子どもはパニックになると危険性を判断できない

事例 :4歳の女児。2016年の冬、横浜市の幼稚園。トイレから出てきたが、同じクラスの子どもたちの姿が見えない。その子たちを探すために、上の階に上がった。鍵がかかっていなかったので、ドアから屋上に出た。すると、園庭で友達が運動しているのが見えた。自分も行こうとしたが、ドアが自動で閉まってしまい開かない。そこで、フェンスの下と屋上の床のあいだの23センチのすき間をくぐり抜けてルーフの上に立ち、約2メートル70センチ下のテラスに飛び降りた。大きなけがはなかったが、2日間、入院した。

 この幼稚園では、その日のうちに、ホームセンターで購入したワイヤネットですき間をすべて埋め、通れないようにしました。この園では、手すりの高さは建築基準法施行令の規定より20センチ高い130センチに、また、柵の間隔も安全の目安とされる11センチに設定していました。また、手すりの周りに踏み台になる物を置かないなど、転落防止の対策もとっていましたが、「手すりと床とのすき間」については考えていませんでした。飛び降りたお子さんについて、担任の教諭は「いつもは引っ込み思案で、遊具の高いところも怖がるようなお子さんで、まさかあの子が狭いところをくぐって飛び降りるなんて」とコメントしていました。

 この事例から、柵の下のすき間にも子どもはもぐることがあること、また、4歳児では、パニックになると転落の危険性を判断することができない状態になることがわかります。

4歳児は100ミリのすき間でもすり抜ける

 前回紹介した東京都生活文化局の「 子供のベランダからの転落防止のための手すりの安全対策 」という報告書には、警視庁が把握している情報が「協議会関係者限り」の資料として提供され、「縦格子手すりの格子のすき間(12センチ)からすり抜けて転落した事例があった」と報告されています。たぶん、柵を設置したときに、一番端の部分の幅が基準値の11センチより少し広く12センチとなってしまったが「まあ大丈夫だろう」と判断されたのだと思います。子どもの身体能力データの「すり抜けられる幅」を見ると、4歳児の平均は115ミリですが、100ミリでもすり抜けられるとなっています。

 このように、柵の幅一つとっても、年齢別に、子どもの体の各部位や身体能力を計測しておくことが安全を考える上では必要となるのです。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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