後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」
医療・健康・介護のコラム
「看取りのチカラ」第20話 食べるのがつらくなってきたら 無理をせずに本人の意思を尊重して
口から食べることの幸せを感じながら
終末期の患者さんは、たとえ食欲がなくても、「なんとか食べよう」と頑張ることがあります。でも、いよいよつらくなってきたときに、食べることを強要されるのは、苦しみが増すだけです。衰弱が進んできたら、無理をさせずに、本人の意思を尊重しましょう。
若くて元気な頃は、当たり前にできるので、つい忘れがちですが、口から食べるというのは、とても複雑な行動であり、幸せなことなのです。
全身が衰弱していれば、当然、口から食べる機能も衰えます。口から食べるということは、栄養をとるだけが目的ではありません。
おいしいものを味わう幸せには、食事をしながらの楽しい会話、きれいに器に盛り付けられた見た目の美しさなど、食べるということ以外にも様々な幸せがあります。だから、できるだけその幸せを最後まで感じてほしいと思っています。
しかし、そこにはリスクもあります。
食べ物で喉を詰まらせたり、嘔吐(おうと)したものや増えた痰(たん)のせいで窒息したりすることもあります。
異物による気道閉塞(へいそく)を認識したら、せきができるなら、せきを続けるように促します。話したり叫んだりすることができないとか、弱々しいせきや顔色が蒼白(そうはく)になるなどの兆候がある場合は、ただちに対処しないと命に関わります。
しかし、すでに衰弱が進んでいる状態では、無理な蘇生はしないという選択肢を事前に話し合っておくことがあります。たとえ命を取り留めても、人生を楽しめる健康状態には戻れないかもしれません。つらい症状があれば、そのつらさは取り除きますが、そのまま自然に見送ることもあります。
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