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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

愛犬ココ君の物語(上)徘徊する認知症女性をいつもホームに連れ帰る

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続・伴侶動物福祉のモデルケース…認知症の女性と愛犬ココ君の物語(上)

入居した当時の橋本さんとココ君

 橋本幸代さん(仮名、70歳代)が特別養護老人ホーム「さくらの里山科」に、愛犬のココ君(トイプードル、当時6歳)と同伴入居したのは、2017年のことでした。その経緯も、伴侶動物福祉(私の造語。高齢者を幸せにするために、その愛犬、愛猫も一緒にケアする福祉)のモデルケースといえるものですが、その道のりは平たんではありませんでした。

 元々、橋本さんがココ君を飼い始めた時はまだ60歳代。おそらくその年齢なら、犬を最後まで面倒みられると考えたのだと思います。しかし、その後ほどなくして、橋本さんは認知症を発症してしまいました。橋本さんの息子さんは、早い段階で手を打った方が安心だと考えたのでしょう。ペットと一緒に入居できる住宅型有料老人ホームを探し出し、橋本さんとココ君はそこで暮らすことになりました。

 住宅型有料老人ホームは、基本的には食事や洗濯、掃除などの家事サービスがついている老人ホームです。見守りは行いますが、介護は行いません。介護が必要になったら、外部の在宅介護サービスを利用することになります。

 軽度の認知症だった橋本さんは、まだ介護を受ける必要はなかったので、住宅型有料老人ホームで快適に生活することができました。ですから、そこを選んだ息子さんの判断はとても良かったのだと思います。軽度の認知症でも、火や刃物を扱うのは難しい場合が多いのです。火事やけがにつながるリスクが高まります。

 また、自力で入浴することが問題なくても、きちんと体や髪を洗えない場合もあります。洗濯した物と汚れている衣類を交ぜてしまうこともあります。清潔を保てないと、様々な病気になる恐れが高まってしまいます。

 さらに、自力で食事を作れても、同じ食材ばかり使い、栄養のバランスが崩れてしまう場合があります。食卓の上に長時間置いておいた料理を食べて、おなかを壊すケースもあります。食事を適切に取れなければ、体調を壊す恐れは高くなります。

 このように軽度の認知症では、基本的な家事をする能力があっても、生活に大きな支障をきたし、健康を保てなくなるケースが多いのです。だから、軽度の認知症の段階で、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅に入居することにより、健康な状態を長続きさせることはよい選択だと思います。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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