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産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」

医療・健康・介護のコラム

増加し続ける新入社員の退職、「石の上にも三年」という親の反対とどう向き合う

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入社して会社や仕事内容が分かった

 彼は「親父の言うこともわかる。悩んだよ。仲間も2割くらい辞めているよ。今は、 早い時期に決断して転職すれば『第二新卒』と言って、不利にならない形で再就職できるようになっているよ」と反論しました。

 家では、このようなやりとりを2日間繰り返しました。それでも彼の気持ちは定まっているので、直属の課長に「退職の意向」を伝えました。上司も「まだ、入社半年だ。じっくり考えた方がよい」と言って、メンタルヘルスを心配して私への相談を勧めたのでした。

親の反対がストレスに

 彼は、私に対しても、「辞めたい、第二新卒でチャンスがあるから」と訴えます。そして「両親には強く反対されました。気持ちを説明しても、わかってくれません。母は親戚や友だちにもうれしそうに就職を報告していたので、ショックを受けています」と、親の反対が気になって悩んでいる様子がうかがわれます。さらに「先生、働くのは僕なんですよ。ちゃんと考えたことなんだから、反対しないで、応援してほしいですよ」と、時に怒りも見せました。上司が心配したような気になるメンタル不調は見られませんでしたが、親の反対はつらいようでした。

 そこで、「自立した大人なんだから、『自分の決断を尊重してほしい』」ともう一度、両親に話をしてみたらどうか、とアドバイスしました。

親は「意志が弱いのではないか」と心配

 彼は理解を得るべく、再び話し合いました。そこで彼が理解したのは、息子が一流銀行に入ったことに親がプライドを感じていること、そして、すぐに辞めてしまうのは彼の意志が弱いのではないか、と心配していることでした。

 私は彼に言いました。「親の指摘はもっとも。退職希望は意志の弱さではないと示すためにも、今までの就職活動や入社後の自分を振り返り、向き合うこと。そうして新しい会社を探す時に重要なポイントを考えては」。転職のエージェントからも振り返りが必要と言われていたそうです。

仕事内容を十分に考えずに就職先決定

 振り返ると、就活はバタバタの連続で、狙いを定めた企業でいち早く内定が出た銀行に決めてしまったということです。どんな仕事をするのか、という具体的なイメージまでは十分に持っていなかったそうです。改めて企業の業務内容をよく調べて考えると、やはりモノを扱っているメーカーで働きたいという気持ちがはっきりしました。

 親には事後報告で、会社に辞表提出。納得できない両親には「心配してくれるのはありがたい。でもね、働くのは僕だよ。カウンセリングも受けて、もう一度よく考えてみた。今後を見守ってほしい」と伝えました。

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夏目誠(なつめ・まこと)

 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会元理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」ウェブ書籍「メンタル・キーワード療法~5分でできる簡易セラピー」。
夏目誠の公式ホームページ」「精神科医マコマコちゃんねる - YouTube

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