文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

「産まないと一人前じゃない」の言葉に縛られる30歳女性…夫は無精子症 SNSで知り合った提供者から

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

「子どもが欲しい」夫婦の葛藤

「産まないと一人前じゃない」の言葉に縛られる30歳女性…夫は無精子症 SNSで知り合った提供者から

不妊治療の情報を求めるツイッターのアカウント。同じ境遇の人とつながりを求める投稿も多い(画像は一部修整しています)

 子どもを望みながら、不妊に悩む夫婦は、5・5組に1組いると言われています。

 検査や治療をする人は増えていますが、問題の繊細さから、内情はあまり公には語られません。当事者は社会で見えにくい存在です。

 近年、不妊に悩む夫婦らが、SNSや海外の精子バンクを介して精子の提供を求めるケースが増えています。4月以降、精子提供を巡る現状や問題点を取材してきました。

 取材を通して見えたのは、子どもを持てない夫婦の苦悩や葛藤、そして生きづらさでした。

 東日本に住む保育士の幸さん(30)(仮名)は、ツイッター上で知り合った男性の精子を使い、妊娠を試みています。

 幸さんが結婚したのは3年前。ほどなく夫が無精子症であることがわかりました。複数の病院を回りましたが、結果は同じ。第三者の精子を使った不妊治療を実施する医療機関は近県になく、SNSで同じ境遇の人を探す中、1年半前に見つけたのが、精子を提供してくれた男性でした。

 これまで10回以上提供を受け、排卵を促す注射のため、毎月仕事を休んで病院に通っています。でも、妊娠に至っていません。職場で「また休むの」と聞かれるたびに居たたまれず、妊娠した同僚を見ることもつらく感じます。

 「女の人は子どもを産まないと一人前じゃない」。幸さんは、結婚後に母親に何げなく言われた一言がずっと心に刺さっているそうです。「難なく子どもを授かった人には、私たちの気持ちはわからないでしょう」と訴えます。

 医療機関を介さないSNS上での精子提供については、感染症などの安全面が懸念されます。生まれた子どもの「出自を知る権利」の問題もあります。それでも利用が増えるのは、社会の空気も関係なくはないでしょう。

 ジャーナリストのくどうみやこさんが、子どものいない女性約300人に実施したアンケートでは、81%が「肩身が狭い」、76%が「罪悪感を感じる」と回答しました。くどうさんは「旧来の家族観や少子化で、子どもがいない女性は批判の矢面に立たされやすく、うつ状態になる人も多い」と指摘します。

 東京都の悠太さん(仮名)夫妻(いずれも30歳代)は、信頼できる海外の精子バンクを利用し、体外受精で妊娠しました。

 夫妻の場合も、悠太さんの無精子症が原因でした。不妊治療を重ねる中、「僕だってなりたくてなったわけじゃない」ときつい言葉を妻にぶつけたこともあったそうです。時に泣き、けんかしながら、話し合いを重ねてきました。

 悠太さんは「日本では、父親と血がつながらない家族を選んだ私たちは少数派かもしれない。でも愛情を注げば、子どもは受け入れてくれると信じています。これが私たちの『普通』です」と言います。

 取材で出会ったほかの夫婦らも「家族とは何か」という問いに 真摯しんし に向き合っていました。みなさんも様々な考えがあるでしょう。正解は家族の数だけあり、誰も否定できないのではないでしょうか。

 悠太さん夫妻に新しい家族が生まれるのは年明けです。

今回の担当は

 川崎陽子(かわさき・ようこ) 同性カップルや非婚のシングルマザーなど家族を巡る問題を幅広く取材している。

身近な疑問や困り事、記事への感想や意見を寄せて下さい

 〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「言わせて」係

 iwasete@yomiuri.com

 QRコードから「友だち追加」してください

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事