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過労自殺「誰にでも突然起きうる」…胃痛や不眠訴える息子、それでも月100時間超の残業

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過労自殺「誰にでも突然起きうる」…胃痛や不眠訴える息子、それでも月100時間超の残業

厚労省

 長時間労働などで心身ともに追い詰められ、自ら命を絶った働き手の多くが、うつ病などの精神疾患を発症してから短期間のうちに自殺に至っている現状が、厚生労働省の調査で浮き彫りになった。2019年に亡くなった男性の家族は「誰にでも突然、起きうること。職場で苦しんでいる人がいれば、手を差し伸べてほしい」と呼びかける。

 「お兄ちゃん、おめでとう」「ありがとう、30歳になった」

 19年11月2日、電機大手・東芝グループの「東芝デジタルソリューションズ」のシステムエンジニアだった安部 真生しんは さん(当時30歳)は、家族からLINEで誕生日を祝ってもらい、返信した。その2週間後の11月16日夜。安部さんは自宅マンションから飛び降りた。

 川崎南労働基準監督署(神奈川県)は、安部さんの自殺を労災と認定した。同労基署は長時間の過重労働によるうつ病が原因で、発症時期は亡くなる直前の「11月中旬頃」と判断した。

 安部さんは東大大学院を修了後、15年に入社。語学力を買われ、16年の伊勢志摩サミットでは各国要人に自社製品をPRする通訳を務めた。家族の目からは、充実した日々を送っているように見えたという。

 だが、入社5年目の19年4月、部署を異動すると、介護データサービスに関するシステム開発などに携わり、未明の帰宅や早朝の出勤が続いた。10月頃から胃痛や不眠を訴えるようになったが、精神科を受診することはなかった。この頃、安部さんの1か月の残業は100時間を超えていた。母の宏美さん(61)は「職場は仕事の進展だけは気にするけど、社員の体調を気遣うことはなかったのでは。いつの間にかストレスが重なり、精神的にも体力的にもきつかっただろう」と憤る。

 父の晋弘さん(65)が同社側から受けた報告によると、安部さんは亡くなる6日前の11月10日、自身の作業ミスに気付いて同僚に落ち込んだ様子を見せたという。同13日に開かれた会議で安部さんが抱えていた業務は同僚に分担されることになったといい、命を絶ったのはその3日後だった。

 安部さんの死後、周囲からは「息子さんはまじめだったのね」と声をかけられたという。だが、宏美さんは「逃げればいい、辞めればよかったのに、と個人の問題にしてはいけない。業務が一人に偏るような働き方が 蔓延まんえん する会社に問題がある。安心して、希望を持って働ける会社に変わってほしい」と訴えた。

 安部さんの労災認定を受け、東芝デジタルソリューションズは「働きすぎ防止、職場内でのコミュニケーション活性化などの施策に加え、社員個人のセルフケア向上施策にも取り組んでおり、社員の心身の健康維持増進に一層努めてまいります」とコメントしている。

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