新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
真実の究明と再発防止を目指し 防げる医療過誤を防ぐための取り組み
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

【今月のゲスト】
井上恵子(いのうえ・けいこ)さん
2013年、乳がん検診を受け、生検の結果は「良性」。14年、生検の検体取り違え事故が明らかになり、乳がんを手術。抗がん剤、放射線治療後、ホルモン療法を継続中。17年、相手方に損害賠償請求を行い、翌年示談。
19年、医療事故の事故調査の必要性を痛感し、医療過誤原告の会に入会。医療事故調査制度の運用改善と患者の権利を定めた医療基本法の制定を目指して活動をしている。20年には、精神科での医療事故の事例を知り、大阪精神医療人権センターにも入会。同会の「権利擁護システム研究会」に参加して患者の権利擁護について法的・制度的な側面から学んでいる。医療・介護関係者・患者・市民・製薬企業等の様々な立場の方々との交流から、視野を広げることで事故の背後にある問題にも目を向け、より良い医療を目指して活動している。
・医療過誤原告の会 http://www.genkoku.net/
医療過誤原告の会・井上恵子さん(下)

医療過誤における原因究明方法(井上恵子さん作成)
今日のカフェには、自らの乳がん治療で医療過誤を経験し、今は医療過誤原告の会の会員として相談や支援を担当している井上恵子さんがお越しになり、オーナーの私と話をしている。
5年の年月をかけて示談に至るまでの交渉の苦労をさきほど伺った。
交通事故であれば、第三者的な立場から、警察や保険会社が、原因を究明し、責任の所在を明らかにし、救済する制度が整っている。
しかし、医療過誤では、まず被害者がそもそも被害を受けたかどうかを自分では判断できないことが多い。第三者的な立場で調査をしてくれる組織はない。
病院(医師や看護師)、関係する会社、行政などを相手に、自らが協力者を探し出し、行動する必要がある。さらには、医療現場は患者側では見えない箇所が多い。客観的事実を明らかにするだけでも、困難を極める。
特に、医師や弁護士で、医療過誤における被害者側に立って協力してくれる方は少ない。今のシステムを考えればそれは当然だ。
「被害救済のシステムを整える必要があるんです」。井上さんは強い口調で言う。
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