文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

続発するベランダからの転落死 最も多いのは「2歳」…防止策を妨げるもの

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

「高所平気症」という言葉の問題点

 高所平気症という言葉を聞いたことがありますか? 近年、高層住宅が増えて、「高層階に住んでいると、高所にいるという怖さを感じなくなり、転落してしまう」という筋書きの話ですが、「高所平気症」という医学用語はありません。この言葉の問題の一つは、「平気」という言葉です。「平気」という言葉を使う場合には、「それを理解している」という大前提があります。高所を怖いと思って理解している人について、「平気」あるいは「平気でない」という判定をすることはできると思います。しかし、データからわかるように、幼児の転落は、2~4歳が多く、高所への理解は不十分で、平気かどうかを検査することはできません。すなわち幼児では、「平気」「平気でない」と判定することそのものに意味がないということです。平気ではなく、使うとしたら「知らない」「わからない」という言葉を使うべきと思います。

 もう一つの問題は、「平気だから転落した」と、転落の原因を子ども本人のせいにしている点です。建物の構造の不備や踏み台となるものについて検討すべきなのに、子ども自身に責任を負わせても予防にはつながりません。このような対応をしているから、同じ転落死が起こり続けているのです。

 高所からの転落例で、たまに大けがをしないことがあります。このような例は、「奇跡の生還」などと言われ、テレビなどで何度も取り上げられることがあります。例えば、5階の窓から転落すれば死亡する可能性が高くなりますが、無傷で助かるのは、建物の下の木や植え込みがクッションとなった場合です。ほとんどは死亡するのに、非常にまれに起きた事象をことさら取り上げることは、社会の認識を間違えさせる可能性があります。興味本位で取り上げることは避けるべきと思います。

 次回は、予防するためにはどうすればよいかについて考えます。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

yamanaka-tatsuhiro_prof

山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

山中龍宏「子どもを守る」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事