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新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

乳がん検査で検体を取り違え 医療過誤から見えてきた被害者の現実

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「下請けの検査会社が」

手術前の検査結果は「良性」だったが 検体の取り違えが引き起こした医療過誤から見えてきた医療の闇

母(左)には乳がんであることを最後まで言えなかった(井上さん提供)

 しばらくしたある日、病院から電話が入った。手術の前に受けた「良性」との検査結果が間違っていたという内容だった。

 検査会社が、別の女性の検体と、取り違えたのだという。本当は、手術前に受けた生検でも「悪性」、すわなち、がんが見つかっていたのだ。

 医療過誤である。念のため腫瘍の切除手術を受けたので、検体の取り違えが発覚したが、「良性」との検査結果を信じて経過観察という道を選んでいたら、その後の経過は全く違ったものになっていたはずだ。

 「あ、なるほど」

 結果は重大だったが、検査結果が食い違った原因が分かったことで合点がいき、当時は冷静に受け止めたそうだ。

 その後、検査会社からは、取り違えは下請けの検査会社が起こしたとの説明があった。

 がんだったと分かったことで、周囲を含めて腫瘍部分を広めに切り取る再手術も必要となり、それらの損害賠償請求のために、検査会社との交渉に臨むことになった。

医療安全支援センター「対応できない」

 法律的な側面からの対応も必要になることから、まず、協力してくれる弁護士を探した。

 しかし、賠償額はさほど見込めない案件を引き受けている弁護士はなかなか見つからない。

 自治体の医療安全支援センターへ相談したが、「検査会社のミス案件であり、医療機関には該当しないので、対応できない」と言われた。

 協力してくれる弁護士も相談機関も見つからないまま、乳がん手術後の通院治療を続けつつ、まずは検査会社に事故の経緯を聞くことから交渉を始めた。

 今回関係があるのは、1・手術前の検査をした「病院」、2・検査の委託を受けた「元請け検査会社」(検体を受け取り下請け検査会社へ運ぶ)、3・元請けから再委託を受けて検体を実際に検査した「下請け検査会社」、4・腫瘍の摘出手術を受けた「病院」である。

 さらに、井上さんが「悪性」の検体を「良性」に取り違えられたということは、逆に、「良性」なのに「悪性」と誤診されたもう一方の患者や病院も存在することになる。

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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