認知症×発達障害 岡崎家のトリプルケア
もっと知りたい認知症
【最終回】「安全最優先」で暴走しかけた私 ケアマネの一言で目が覚めて…母さんの介護を終えて(下)
タオル掛けを手すり代わりに
そんなある日、母さんの着替えを手伝っていると、太ももの外側に大きな内出血の痕があるのに気づきました。追及すると、「お風呂で転んだ」と白状。浴室には父さんのために設置した手すりがありますが、母さんの身長には合わなかったというのです。それをケアマネジャーに言えば、「デイサービスでの入浴」を勧められるので、なじみの電気屋さんに頼み込んで手すり代わりに「タオル掛け」を設置してもらったそうなのです。そのタオル掛けをつかんだ手が滑り、転んだ結果の内出血でした。
この話をケアマネジャーに伝えると、彼女は福祉用具の専門相談員を引き連れて、実家にすっ飛んで来ました。介護保険を利用した住宅改修で、母さんに合った手すりを付けようというのです。
おなかの傷を見られたくなかった
でも、私は「デイサービスでの入浴」を無理矢理にでも押し進めようと心に決めていました。手すりがあっても、1人で入浴する限り事故を完全に防ぐことはできません。娘の私がそう言えば、きっとケアマネジャーも賛同してくれると思っていました。ところが、「まずは本人の気持ちを一番に考えましょう」と予想外の言葉で諭されたのです。
この一言に、私はハッとさせられました。なぜ、母さんはあんなに「デイサービスでの入浴」を拒むのか……。
母さんのおなかには、自ら「お化けちょうちん」と呼んでいた通り、卵巣がんの手術痕などの大きな傷がありました。それを他人に見られることをひどく嫌がっていて、友達から温泉に誘われても「傷があるから」と、断り続けていたほどです。
それなのに、私は知らず知らずのうちに、「安心・安全に暮らしてほしい」という自分の思いばかりが先行して、母さんの気持ちを無視した独りよがりの介護になっていたのです。
結局、浴室には母さんの背丈に合った手すりをつけてもらい、1人で入浴する生活が続きました。
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