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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

医療と福祉のはざまで悲痛な叫び 慢性的な人手不足が生む筋ジス病棟の構造的課題

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病院スタッフの負担増が患者にしわ寄せ

 報告書の執筆者の一人、大藪光俊さん(27)は、脊髄性筋萎縮(いしゅく)症Ⅱ型で24時間介助を利用して自立生活をしながら、日本自立生活センターの障害当事者スタッフとして活動している。記者会見で大藪さんは、「調査結果によって、すべての病院ではないにせよ、一部の病院において、制限が多く患者さんが抑圧的な状況に置かれていることが浮き彫りになった。なかには、虐待とも言えるような状況があることも分かった」などと説明した。

 ただその上で、決して病院やスタッフを責めたいわけではなく、問いたいのは、このような状況を生み出している看護師の人手不足などの構造的な問題であることを繰り返し強調した。

 説明によると、届け出上はスタッフ1人で患者7人の対応をしている病棟がほとんどだが、実態は夜間などではもっと少なく、スタッフ1人当たりが抱える仕事量が多すぎて、到底、一人一人の患者に向き合う時間はない。「そういった状況が、病院スタッフの負担を生んでいて、そのしわ寄せが入院患者さんに来てしまっている」という。

「地域で暮らすことは権利」

 筋ジス病棟に入院している患者が、病院を出て地域で暮らすための課題として、患者自身が、地域で暮らせることそのものを知らなかったり、情報がなく自分には無理と諦めてしまったりしている例や、患者が希望しても病院側が無理と決めつけている状況があるという。

 大藪さんは「こういった状況を変えるには、まず、地域で暮らすことが権利であり可能なんだという情報を、患者さんにも病院のスタッフにも届けて、広めていくことが大事」と述べた。

 同プロジェクトは今後、この調査結果を基に、厚生労働省などに改善の取り組みを働きかけていきたいとしている。(田村良彦 読売新聞専門委員)

 ・「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」 https://note.com/kinjisu_project/

 

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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