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ブレーキとアクセル踏み間違え…免許返納しない84歳の父 どう説得する?

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 同じ悩みを抱えている方は少なくないと思います。

 先日、読売新聞に電話をしてきた大阪府内の女性が思い詰めた様子で語りました。

免許返納どう説得すれば

返納制度を説明する冊子。大阪府内の警察署で配られている

 「朝から不安でずっと息苦しく、夜になってからようやく『ああ、よかった。警察から電話がかかって来なかった』と胸をなで下ろす。そんな毎日の繰り返しです」

 女性は84歳の父親が車の運転で事故を起こさないか、心配で仕方がないといいます。父親に運転免許証の自主返納を勧めても、「絶対に事故はしない」と聞き入れてくれず、女性は「どうすればいいのか」と声を落としました。

 府内で一人暮らしをする父親は、商店を営んでいます。自宅から店まで約10分。長年、車で往復していました。

 女性が免許返納を真剣に考え始めたのは今年3月。父親が脳 梗塞こうそく で救急搬送されたことがきっかけでした。

 間もなく退院できましたが、病院では「再発の可能性もあり、運転は控えたほうがいい」と言われました。それでも運転を続けた父親は6月、駐車場でブレーキとアクセルを踏み間違えて壁に激突してしまいます。幸いけがはありませんでしたが、女性は「もし人通りの多い場所だったら……」と怖くなりました。

 女性は警察署で自主返納に関する資料をもらって父親に渡し、電車を使うように提案しました。しかし、父親は「俺の免許を取り上げるつもりか」と怒り、話し合いは平行線のままです。

 全国で返納が大きく進んだのは2019年でした。東京・池袋で高齢ドライバーの車が暴走し、11人が死傷した事故が注目を集めました。この年に返納した75歳以上の人は過去最多の35万人となり、20年も29万人に上りました。リスクが高いと感じた人が増えた結果だと思います。

 一方で、女性のように返納を巡って親子関係がぎくしゃくすることは多いようです。

 高齢者運転の問題に詳しい九州大の 志堂寺しどうじ 和則教授(交通心理学)は「高齢でも『自分はまだ大丈夫』というプライドがある人も少なくない。家族だけで説得するのではなく、第三者の力を借りてもいい」と話します。

 本人が信頼する知人や、かかりつけの医師らから意見を言われると聞き入れる可能性があるという考えです。

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 その上で志堂寺教授は「急に現実に直面すると、お互い感情的になりやすい。早い時期から将来の返納について家族で話し合っておくことが重要だ」と強調します。

 私は2年前まで島根県で勤務していました。電車やバス路線が減り、「車がないと買い物や病院に行けない」という切実な声をよく聞きました。地域や家庭ごとに事情は異なり、問題は複雑です。

 それでも今回、女性の言葉は重く響きました。

 「もし父が大きな事故を起こしたら、なぜ運転を止められなかったのかと、一生後悔すると思います」

 解決策は簡単には見つかりませんが、同じような思いをされた方の話の中にヒントがあるかもしれません。ぜひ、体験談を聞かせてください。

今回の担当は

 中瀬有紀(なかせ・ゆき) 大阪府警の取材を担当。交通や消費者問題の記事を書く。昨年は京アニ事件の捜査の動きを追った。29歳。

身近な疑問や困り事、記事への感想や意見を寄せて下さい

 〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「言わせて」係

 iwasete@yomiuri.com

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