Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
睡眠不足に強い人を「うらやましい」と思ったことはありますか?
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。
仕事や行事が立て込んで、いくら時間があっても足りない時がありますよね。残業で睡眠時間を削っても平気な顔でがんばれる人を見て、「うらやましいなぁ」と感じたことがあるでしょうか? 具体的には睡眠不足に強いとは何でしょうか? 本当にうらやむべき“特技”なのでしょうか?
体が出すサインに慣れることで
突然ですが、皆さんは普段の生活でにおいが気になりますか? 人の部屋や車内に入った時、ふと、においを感じることがありますよね。でも、どうでしょう。その部屋に入って、ものの数分もたてば意識しなくなりませんか? それは嗅覚には慣れが生じやすいためです(順応と呼びます)。順応すると嗅覚が刺激されてもあまり感じなくなるのです。実は睡眠不足の時にも同じような現象が起こっています。睡眠不足のサインに慣れてしまい、その存在に気付かなくなるのです。
睡眠不足の時には、眠気、 倦怠 感、ボンヤリ感などのほか、認知機能(記憶力や判断力)、集中力や持久力、反応速度(反射能力)、感情の安定性(キレやすさ)、相手の感情をくみ取る力など、さまざまな脳機能が低下します。また、身体機能にもさまざまな問題が生じます。耐糖能(血糖を適切に低下させる力)の低下、食欲を 亢進 させるホルモンの上昇、逆に食欲をセーブするホルモンの低下、交感神経の緊張(血圧上昇、心拍数増加など)、ストレスホルモンの上昇など、体の代謝を正常に保ち、心身を静養させるために必要な身体機能が、睡眠不足によって低下することが知られています。
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