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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

睡眠不足に強い人を「うらやましい」と思ったことはありますか?

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。

 仕事や行事が立て込んで、いくら時間があっても足りない時がありますよね。残業で睡眠時間を削っても平気な顔でがんばれる人を見て、「うらやましいなぁ」と感じたことがあるでしょうか? 具体的には睡眠不足に強いとは何でしょうか? 本当にうらやむべき“特技”なのでしょうか?

体が出すサインに慣れることで

睡眠不足に強い人を「うらやましい」と思ったことはありますか?

 突然ですが、皆さんは普段の生活でにおいが気になりますか? 人の部屋や車内に入った時、ふと、においを感じることがありますよね。でも、どうでしょう。その部屋に入って、ものの数分もたてば意識しなくなりませんか? それは嗅覚には慣れが生じやすいためです(順応と呼びます)。順応すると嗅覚が刺激されてもあまり感じなくなるのです。実は睡眠不足の時にも同じような現象が起こっています。睡眠不足のサインに慣れてしまい、その存在に気付かなくなるのです。

 睡眠不足の時には、眠気、 倦怠(けんたい) 感、ボンヤリ感などのほか、認知機能(記憶力や判断力)、集中力や持久力、反応速度(反射能力)、感情の安定性(キレやすさ)、相手の感情をくみ取る力など、さまざまな脳機能が低下します。また、身体機能にもさまざまな問題が生じます。耐糖能(血糖を適切に低下させる力)の低下、食欲を 亢進(こうしん) させるホルモンの上昇、逆に食欲をセーブするホルモンの低下、交感神経の緊張(血圧上昇、心拍数増加など)、ストレスホルモンの上昇など、体の代謝を正常に保ち、心身を静養させるために必要な身体機能が、睡眠不足によって低下することが知られています。

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会理事、日本学術会議連携会員。著書に「不眠症治療のパラダイムシフト」(編著、医薬ジャーナル社)、「やってはいけない眠り方」(青春新書プレイブックス)、「8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識」(共著、日経BP社)などがある。

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