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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

睡眠不足に強い人を「うらやましい」と思ったことはありますか?

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睡眠不足に順応してしまうと

 そこで伺いたいのですが、皆さんは自分が睡眠不足かどうか、何をバロメーターにして判断しますか? 多くの方は眠気や倦怠感、ボンヤリ感を頼りに判断しているのではないでしょうか? 職種によっては、持久力の低下や反射力の低下によって気付くかもしれません。確かに急な用事などで一晩ほとんど寝られなかった時などは、翌日の日中に眠気やだるさでつらい思いをします。ところが睡眠不足を何日も続けていると、体が順応して眠気やボンヤリ感を感じにくくなるのです。

 眠気が自覚できなくなる典型的な例として、睡眠時無呼吸症候群や過眠症など、日中に絶えず眠気が持続する睡眠障害の患者さんがいます。例えば、睡眠時無呼吸症候群では毎晩、睡眠中に数十秒から時には1分以上にわたって呼吸が止まるため、そのたびに血液中の酸素濃度(酸素飽和度)が低下します。呼吸が止まったままでは死んでしまうので、呼吸を再開できるように、脳が睡眠を中断していったん覚醒しようとします(覚醒反応と呼びます)。一晩中に覚醒反応が何十回も、時には何百回も生じるため、深い睡眠がほとんど取れなくなってしまいます。ご本人はある程度、寝ているつもりでも、睡眠の質が著しく低下するため、日中に強い眠気を生じます。

 その結果、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは会議中など寝てはいけない場面でもしばしば居眠りをしてしまいますが、それが毎日続いているため自覚できません。実際、脳波検査で強い眠気があることを客観的に確認できている患者さんに、「眠いですか?」と質問しても、「眠くない」と真顔で答えることがしばしばあります。これは大問題なのです。というのも、眠気を自覚していれば、「運転や危険業務に従事しない」「どうしても睡魔に勝てそうもなければ仮眠を取る」などの対策を打てます。ところが眠気を自覚できないために、危機感を持たないままに運転や仕事を続けてしまい、大事故を引き起こしてしまう危険があるのです。これまで、この病気のために大型観光バスや新幹線の運転士の方が普段ならありえないミスを冒し、多数の死傷者を出す悲惨な事故や、駅で止まらずオーバーランにつながってしまった事例がありました。

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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