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人が集まる、人が創る…障害者のアート作品集④ みぬま福祉会

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 みぬま福祉会は、埼玉県南部地域を拠点とする社会福祉法人。1984年に浦和養護学校(当時)の卒業生を中心にした進路保障の取り組みから始まった。現在、利用者は300人を超え、事業は20を超える。なかでも2002年に設立した障害者の芸術活動の拠点「工房集」は、「そこを利用する仲間だけの施設としてではなく、新しい社会・歴史的価値観を創るためにいろんな人が集まっていこう、そんな外に開かれた場所にしていこう」という想いを込めて「集(しゅう)」の文字を盛り込んだ「工房集」と呼ばれる。今では多くの作家が活動するほか、作品の展示を見学に来る人が絶えない。この工房集で活動する10人の作家の作品を紹介する。(作品紹介文は、みぬま福祉会の執筆)

横山明子「メガネ」1998年

横山明子「メガネ」1998年

 横山さんは、みぬま福祉会の表現活動が、仕事へと発展するきっかけをくれた人だ。入所当時は、人との関わりや下請け作業の仕事を固く拒否していた横山さんだったが、「絵描いてくれる?」だけには喜んで応じてくれる姿から「横山さんの好きなことを仕事にしよう」と、工房集の表現活動が始まった。油性ペン「マッキー」が大好きで、毎日何本もマッキーをアトリエに持って来ては、においをかぎながら制作していた。マッキーのストックは何百本にものぼる。勢いよく描かれた作品は、今も色あせることなく、国内外で評価され続けている。入所から30年経った現在は、自分のペースで穏やかに1日を過ごしながら、大好きな絵を描き続けている。

高谷こずえ「いつも友達いっぱい」2014年

高谷こずえ「いつも友達いっぱい」2014年

 「見てくれた人が元気になってほしい」というのが、高谷さんの口ぐせだ。小さく切った折り紙を一つひとつ重ねていく姿は、真剣であり、楽しそうにウキウキしているように感じる。時に歌いながら、身体でリズムをとりながら作品を作っていく。下書きはしない。何も見ないで、高谷さんのイメージだけで、色彩豊かな作品に仕上げていく。作品一つひとつにテーマがあり、それをイメージしながら制作をしている。平面でも立体でも、あっという間に、キラキラと輝く存在感のある作品になっていく。

佐々木省伍「鼓動」1995年

佐々木省伍「鼓動」1995年

 「すごい絵を描く人がいる」と真っ先に有名になった。佐々木さんは、みぬま福祉会の表現活動を知らしめた先駆者だ。彼の絵画から今の工房集の活動が形になっていった。まだ、みぬま福祉会が下請けの仕事をしていた時代に、絵画の活動をまっさきに取り組んでいたのが佐々木さんだった。喜怒哀楽がはっきりしていて、怒ったり、泣いたり、飛び跳ねたりしながら全身で感情を表現する。絵を描きながら怒り出したり、絵をほめられて全身で喜びを表現したりする。現在は、日中活動だけでなく自分の部屋に戻っても絵を描いている。描きはじめると無口で、とても集中して描いている。同じようなパターンの絵を描き、それぞれ多彩な色で描いているので、絵を並べると色合いの違いがとても綺麗だ。一日の活動が終わる時にもまだ描き足りない様子をみせる。絵を描くことが大好きで楽しそうだ。

柴田鋭一「せっけんのせ」2008年

柴田鋭一「せっけんのせ」2008年

 柴田さんにとっては大好きなオセロ遊びと同様、描く行為自体が気持ちの良いこと、そして落ち着かない時に自らを安定させるものになっている。永遠の謎である“せっけんのせ”を描き続ける在籍30年を超えたベテランは、海外のアートフェアでも注目され、ニューヨークで行われた初個展で作品を完売させた。そんな快挙にも本人はどこ吹く風といった様子で、至ってマイペースだ。言葉遊びを楽しみながら、仲間や職員、皆から人気者となっている。作品の一部は、フランスのジョルジュ・ポンピドー国立芸術文化センターに収蔵されている。

西川泰弘「時」2018年

西川泰弘「時」2018年

 西川さんは、「絵画は僕の人生を最高の人生に変えました。僕は工房集に来て本当に良かったです。」と語る。自ら工房集に電話して絵を描きたいと訴えてきた。自分の感情や要求をコントロールすることが苦手だ。それまで、いろいろな施設を転々とし、理解されず辛い思いをしてきた。本人が望む生活ができず、暴れたり、不安定になり入院したりを繰り返してきた。しかし工房集に出合い、初めて自分が受け入れられ、「絵を描くことを仕事にしたい」という希望をかなえることができた。今までの辛い経験をはねのけるくらい、絵を描くことで前向きになり、励みになるという。周りに感謝し、生きている。

渡邊あや「飛行機」2020年

渡邊あや「飛行機」2020年

 渡邉あやさんの好きなモチーフは「飛行機」だ。自分の表現を見つけるまで、10年かけ悩み、模索し試行錯誤を続けてきた。養護学校の修学旅行で行った沖縄。「また飛行機に乗って、沖縄に行きたい」という思いから見つけたのが飛行機というモチーフ。絵画を描くことで、社会的評価を受け、初めて自分を肯定することができた。現在は、海外の国をテーマに、その国の世界遺産や、文化を描きこみ、海外デビューを夢見ている。本作品は、アメリカをテーマにした作品で、アメリカ大陸、先住民を描きこんでいる。色鉛筆で力強く塗り込められた作品は、渡邉さんの願いの強さが表れている。

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