がん患者団体のリレー活動報告
医療・健康・介護のコラム
NPO法人がんと暮らしを考える会
NPO法人がんと暮らしを考える会は、経済的な困りごとや制度活用についての困りごとを解決することで、がん患者さんとそのご家族の不安を軽減できるよう活動している専門家の団体です。社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、看護師、医療ソーシャルワーカーが会に所属して、患者・家族の生活を支えています。

がんに関する制度を易しく解説するYouTube動画「がん制度大学」
制度を解説するサイト「がん制度ドック」
私たちは2011年、「患者さんが利用できる制度はどのくらいあるのだろう?」「どんな時にどの制度が利用できるのだろう?」ということを、2年間かけて専門家と一緒に調べました。調べた結果が以下の図です。

次の課題は、調べたこれらの制度をたくさんのがん患者さんにどうやって効果的に届けるか、ということです。当時は複雑すぎて不可能と言われていたのですが、「 がん制度ドック 」というWebサイトを2013年に開設することができました。今年7月にリニューアルし、毎日約200件のアクセスがあります。「全てのがん患者さんが1度は使ってもらう」ことを目標に周知に努めています。

今年7月にリニューアルしたWebサイト「がん制度ドック」
病院でお金と仕事の相談
1人のがん患者さんの悩みごとを1度に深く理解し、課題を整理するためには、〈1〉医療ソーシャルワーカー〈2〉社会保険労務士〈3〉ファイナンシャルプランナーの3者が力を合わせることが大切だと分かりました。様々な制度に対して網羅的に対応することができます。それならば、私たちの会に所属する専門家が貢献できると思いました。
病院には医療ソーシャルワーカーが必ずいますが、他の専門家はいません。そこで、私たちは社会保険労務士とファイナンシャルプランナーをペアで病院に派遣することにしました。
「お金と仕事」の両方に対応できるこの相談会 は、順天堂大学医学部附属浦安病院や兵庫医科大学病院を始めとして、2013年から現在まで埼玉、千葉、東京、石川、兵庫の11のがん診療連携拠点病院や患者支援施設で開催することができました。
職場の悩みごとのほか、障害年金や傷病手当金、住宅ローン、家計のアドバイスまで年間200件以上の相談を受ける支援活動になっています。

東京都港区の虎の門病院で

さいたま市のさいたま赤十字病院

千葉県浦安市の順天堂大学医学部附属浦安病院で
YouTubeなどで制度を学ぶ「がん制度大学」
患者さんやご家族に「もっとわかりやすく制度を説明する」ことをコンセプトに「がん制度大学」というレクチャーを2019年から開始しました。共催である東京都港区にある港区立がん在宅緩和ケア支援センター「ういケアみなと」を会場としてレクチャーを行っていましたが、2020年から会場でのレクチャーに加え、YouTubeでも録画を配信するようになりました。
講演のテーマは、「派遣社員の制度」「医療費控除の方法」「60代の年金利用」「老後の資金づくり」など、、経済的な問題に関連した制度だけでなく、がん患者さんに身近な制度や対処方法など様々です。毎月新しいテーマについて無料で学ぶことができます。ぜひ、YouTubeで「がん制度大学」を検索してください。
経済的な問題に専門家と一緒に取り組む
最近、経済的な問題を抱えている患者さんと問題がない患者さんとでは、痛みや不安に大きな差があるというアメリカの大学の調査結果が報告されました。「お金よりも命が大事」という極端な考え方ではなく、がん患者さんの療養生活をより良いものにするために、がん患者さんの経済的な問題に専門家と一緒に取り組んでいきたいと思っています。
NPO法人がんと暮らしを考える会
看護師の賢見卓也氏の呼びかけで、2011年からがん患者さんの経済的な問題や制度に関する研究会が活動を開始した。社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー、税理士、弁護士などの専門家と看護師などの医療従事者で、患者やその家族を支援する方法を検討した。
その議論を踏まえて、2013年に「NPO法人がんと暮らしを考える会」として法人化し、お金や制度を検索できるWebサイト「がん制度ドック」を公開。また、「お金と仕事の相談」を病院と提携して開始した。現在、約70人の専門家会員とともにがん患者さんの経済的な問題の解決を図っている。ホームページ https://www.gankura.org/
このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。
【関連記事】