がんのサポーティブケア
医療・健康・介護のコラム
がんのリハビリテーション 治療前の予防から末期の緩和まで 治療に伴う合併症を軽減 患者の生活の質を保つ
辻哲也・慶応大学リハビリテーション医学教授に聞く
がん患者の闘病を支える「がんの支持医療」について専門家に聞く「がんのサポーティブケア」の第10回は、「がんのリハビリテーション」がテーマです。手術の前から始まるリハビリテーションは、治療中や治療後の患者の生活の質をより良く保つのに役立ちます。診療ガイドラインづくりに携わり、日本がんサポーティブケア学会がんリハビリテーション部会長も務める慶応大学リハビリテーション医学教授の辻哲也さんに聞きました。(聞き手・田村良彦)
2010年の診療報酬改定で「がん患者リハビリテーション料」が新設
――手術後のリハビリなど従来個別には行われていたと思うのですが、「がんのリハビリテーション」という体系的な考え方はいつ頃から生まれたのでしょうか。
私自身ががんのリハビリテーションに本格的に取り組むようになったのは、2002年に開院した静岡県立静岡がんセンターのリハビリテーション科部長として赴任したのがきっかけです。これが国内の先駆けで、当時はまだ、がんのリハビリテーションは一般的なものではありませんでした。
普及の後押しになったのは、06年のがん対策基本法の成立です。がん患者の療養生活の質の維持向上が、基本的施策の柱の一つとして盛り込まれました。リハビリや緩和医療の取り組みを進め、がん患者の身体、精神面をサポートしていこうという国としての方向性が示されました。
――普及に向けてどんな取り組みが行われたのでしょうか。
まず人材を養成することが重要であるとして、07年から、厚生労働省の委託事業として、「がんのリハビリテーション研修」がスタートしました。そのうえで、10年の診療報酬改定で「がん患者リハビリテーション料」が新設され、研修を受けていることが算定要件の一つとされたことが、普及に大きく役立ったと考えています。
リハビリに関わる医師やセラピストら約4万人以上が、この10年間ほどで研修を受けました。現在では、がん診療連携拠点病院の約9割で、入院中のがん患者に対するリハビリが行われています。
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