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もしかして私も「繊細さん」?…ロンブーも公表したHSP

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 「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」という言葉を、最近よく耳にする。視覚や聴覚などが極端に敏感だったり人の気持ちを察しすぎたりして、ストレスを感じやすい性質の人を指す。「繊細さん」などとも呼ばれる。お笑いタレントがHSPだと公表するなどして関心を集めている。(野口季瑛)

Highly Sensitive Person「概念」知り 気が楽に/「自分の良さでもある」

もしかして私も「繊細さん」?…ロンブーも公表したHSP

 東京都の学童職員の女性(51)は聴覚が敏感だ。就寝中、エアコンの室外機の音で目が覚めることもあり、耳栓を使っている。仕事の会議中、同僚がボールペンをカチカチと鳴らすと集中しづらい。テレビで凶悪事件や大災害のニュースを見ると、自分のことのように感じて寝込んでしまうこともあったという。

 2019年末頃、HSPのことを知り、「自分もそうなのではないか」と思うようになった。昨秋からHSPについて学ぶオンライン講座などに参加し、周囲の環境や他人に左右されすぎない考え方を学んでいる。「自分の性質や行動を受け止めることができて気が楽になった。繊細さは自分の良さでもあると感じるようになった」と話す。

 HSPはアメリカの心理学者が1996年に提唱した概念だ。〈1〉外部の刺激に敏感で、影響を強く受けやすい〈2〉他人が気付かないささいなことにも気付く〈3〉感情が豊かで、特に共感力が高い〈4〉物事を丁寧に深く考える――の四つの特徴がある。臨床心理士などによってチェックリストを基に判断され、カウンセリングを通してストレスにならない対処法や物事の捉え方を身につけることもできる。

「ロンブー」田村淳さんの公表で

 日本では、特性を紹介する書籍の発売などをきっかけに、3年ほど前から知られるように。お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんが昨年、HSPだと公表したほか、テーマにした映画も公開され、話題となっている。

 なぜ注目が集まるのか。帝京平成大教授(社会学、心理学)の渡部卓さんは、「実際にカウンセリングには行かなくとも、HSPという概念を知るだけで、自分の特性に向き合いやすくなるのだろう」とした上で、「『そのままの自分を受け入れよう』という価値観が社会全体で共有され始めたことが影響している」と指摘する。

 かつては、自分の弱さを克服しようとする姿勢が良しとされたが、今は、弱さも含めて自分の良さだと認めようとするムードに変化している。「流行の『自己肯定感』にもつながる動き」と渡部さん。

子どもへの理解に

 子どもへの理解につながる場合もある。

 神奈川県のキャリアコンサルタントの皆川公美子さんは、2人の子どもが幼い頃、「服のタグが気になる」などと細かいことで何時間も泣きやまず、「自分の子育てのせいなのでは」と悩んだ。高校で不登校になった時も理由が分からなかったが、概念を知ってから、「繊細な子なのだ」と納得できた。現在は、ウェブサイト「感性キッズ」で情報発信したり、親向けのオンラインセミナーを開いて相談に乗ったりしている。「理解が深まり、自分を責める親が減ってほしい」と願う。

 千葉県教育委員会は昨年から、小中高校の生徒指導担当教員を集めた研修で、光や音に敏感といった特徴を紹介している。担当者は「どうしても環境になじめない子どもがいる。多様な児童生徒を受け入れる体制を整えてほしい」と話す。

 ただ、臨床心理士の広瀬悠貴さんによると、他の障害と特徴が似ている場合があり、HSPだと思っても、実際は発達障害のこともある。HSPから不安障害などになる恐れもあるという。広瀬さんは「困っている時は自分で安易に判断せず、一度心療内科やカウンセリングに行くことも考えてほしい」と勧める。

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