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糖尿病の認知症リスクを左右する7つの危険因子

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 2型糖尿病患者は認知症リスクが高いが、生活習慣や血糖値などの危険因子の改善によりリスクを低下させる可能性があることが示された。オランダ・Maastricht University Medical CentreのApril C.E.van Gennip氏らは、UK Biobank登録者約8万人を平均9年間追跡し、2型糖尿病と7つの認知症危険因子との関係を検討した結果を第57回欧州糖尿病学会(EASD 2021、9月27日~10月1日、ウェブ開催)で発表。詳細はDiabetes Care( 2021年9月29日オンライン版 )に同時掲載された。

目標範囲の危険因子数に伴いリスクが低下

糖尿病の認知症リスクを左右する7つの危険因子

(C)Adobe Stock ※画像はイメージです

 2型糖尿病患者は認知症だけでなく、認知機能障害、脳構造異常のリスクも高い。しかし、危険因子をどの程度改善すれば、発症リスクが低下するかは明らかでない。van Gennip氏らは、UK Biobank登録者約8万人を対象に2型糖尿病と認知症危険因子の関係を検討した。

 対象は2006~10年にUK Biobankに登録され、認知機能検査と脳のMRI検査を受けた40~69歳の8万7,856例(2型糖尿病患者群1万663例、糖尿病でない対照群7万7,193例、平均年齢57.1歳、女性49.4%)。2型糖尿病患者を7つの認知症危険因子の値がガイドラインの目標範囲にある数で4群(0~2、3、4、5~7個)に分類。2018年2月まで追跡して、認知症危険因子と認知症の発症、ドメイン特異的認知機能(処理速度、記憶、実行機能)、脳の構造異常(白質病変、全脳容積)との関係を評価した。

 7つの危険因子は以下の通り。

  • 非喫煙
  • HbA1c 7%未満
  • 血圧130/90mmHg未満
  • BMI 20~25
  • アルブミン尿なし
  • 運動150分以上/週
  • 米国心臓病協会(AHA)Healthy Diet Scoreに基づく健康的な食生活

 平均9.0年の追跡期間中に、糖尿病群の147例(1.4%)、対照群の412例(0.5%)が認知症を発症した。年齢、性、教育レベルを調整後、対照群に対し2型糖尿病群では認知症発症リスクが88%高かった〔ハザード比(HR)1.88、95%CI 1.55~2.27〕。

 対照群に対して、2型糖尿病群では目標範囲にある危険因子数が多いほど認知症リスクが低かった〔目標範囲の危険因子数が0~2個ではHRが2.42(95%CI 1.67~3.52)、3個では2.33(同1.73~3.15)、4個では1.70(同1.23~2.33)、5~7個では1.32(0.89~1.95)〕。認知症発症率は対照群(1,000人・年当たり0.62、95%CI 0.56~0.68)と目標範囲の危険因子数が5~7個の2型糖尿病群(1,000人・年当たりの絶対率差0.20、95%CI-0.11~0.52)で差はなかった。

認知機能、脳の構造とも関連

 認知機能のうち処理速度(SD)のスコアは対照群に対し2型糖尿病群で有意に低く〔SD当たりの回帰係数(β)-0.11、95%CI-0.13~-0.09〕、目標範囲にある危険因子数が多いほどスコアが高かった〔目標範囲の危険因子数が0~2個ではSD当たりのβが-0.18(95%CI-0.23~-0.14)、3個では-0.12(同-0.15~-0.08)、4個では-0.10(同-0.13~-0.06)、5~7個では-0.08(-0.11~-0.04)〕。

 白質病変容積(対数変換mL)は対照群に対し2型糖尿病群で有意に大きく(β 0.16、95%CI 0.09~0.22)、目標範囲にある危険因子数が多いほど白質病変容積が小さかった〔目標範囲の危険因子数が0~2個ではβが0.35(95%CI 0.19~0.51)、3個では0.23(同0.10~0.37)、4個では0.14(同0.04~0.24)、5~7個では0.04(同-0.08~0.15)〕。

 全脳容積(mL)は対照群に対し2型糖尿病群で有意に小さく(β -5、95%CI -7~-3)、目標範囲にある危険因子数が多いほど全脳容積が大きかった。

 目標範囲の危険因子数が5~7個の2型糖尿病群では対照群と処理速度に差はなく、白質病変容積にも差はなかった。

オランダ人対象の追試でも同様の結果

 さらにvan Gennip氏らはオランダ・マーストリヒト在住者5,059人(2型糖尿病患者1,327例、糖尿病でない対照3,732人、平均年齢59.3歳、女性51.2%)を対象としたMaastricht Studyで2型糖尿病と認知症危険因子の関係を検討した。

 対照群に対し2型糖尿病群では処理速度(SD当たりのβ -0.16、95%CI-0.21~-0.12)、記憶(同-0.17、-0.22~-0.11)、実行機能(同-0.15、-0.19~-0.10)のスコアが低く、白質病変容積が大きく(β 0.40、95%CI 0.29~0.51)、全脳容積が小さく(同-13、-16~-11)、ラクナ梗塞罹患率〔オッズ比(OR)1.73、95%CI 1.18~2.46〕が高かった。

 同試験でもUK Biobankの解析と同様に、対照群に対し2型糖尿病群では目標範囲にある危険因子数が多いほど、処理速度と実行機能のスコアが高く、脳の構造異常は小さかった。記憶については同様の関係は認められなかった。

 また同氏らは、追跡開始から5年間のデータを除外して検討した。その結果、対照群に対して2型糖尿病群では目標範囲にある危険因子数が多いほど認知症リスクが低かった。さらに、糖尿病罹患期間を調整後も同様の結果が得られた。

目標範囲の危険因子が1つ増えるごとにリスクは20%低下

 2型糖尿病患者の認知症危険因子をそれぞれ検討すると、HbA1c 7%未満、非喫煙者、アルブミン尿なしが認知症リスクを最も低下させる因子であることが分かった。

 UK Biobankのデータを解析した結果、目標範囲の危険因子が1つ増えるごとに認知症リスクは20%低下(HR 0.80、95%CI 0.70~0.91)した。

 以上を踏まえ、van Gennip氏は「認知症危険因子は、2型糖尿病患者における認知症の発症だけでなく、脳の構造および現在の認知機能にも関連していることが示された」と結論。「これらの危険因子は修正可能で、認知症予防の重要な標的となる。われわれの知見から、現在行われている危険因子の治療と生活習慣の改善が認知症リスクの低下に有用であることが示唆された」と付言している。(大江 円)

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