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宮脇敦士「医療ビッグデータから見えてくるもの」

医療・健康・介護のコラム

介護保険データベースというビッグデータ 医療データとの連携で見えてくるもの

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2000年に公的介護保険制度がスタート

介護保険データベースというビッグデータ 医療データとの連携で見えてくるもの

 今回は、日本のビッグデータの一つ、介護保険データベースについてお話ししましょう。

 介護保険は、介護の「社会化」を目的に2000年に導入されました。それまで、介護サービスは一部の限られた人しか使えず、その機能を病院で埋め合わせる「社会的入院」も問題になっていました。

 介護保険の導入によって、社会的入院などの医療の非効率的な利用が減少しました。また、家族を中心に担われてきた介護の、少なくとも一部が公で担われることで、介護をする家族の負担や就業にも良い影響があったことが報告されています。

 一方で、高齢化や介護事業者の増加に伴い、社会全体の介護保険の総費用(自己負担を含む)は年々増加しています。

 00年には3.6兆円だったのが、17年には10兆円を超えました。これは現役世代の介護保険の保険料アップや、高齢者の自己負担の増加などにつながっており、持続的な介護保険制度を作っていくためにはどうすればよいか、非常に差し迫った問題になっています。

市町村が運営主体 650万人の利用データを国が一括管理

 介護保険の実施主体は市区町村です。そして、それぞれのレセプトデータは、国に集められています。これを介護データベースといいます。

 このデータベースには、全国すべての公的介護サービスを利用できる人(要介護・要支援認定を受けている人)の情報が含まれています。この介護データベースを分析することで、全国の10兆円にものぼる介護サービスがどのように使われているのかを調べることができるのです。

 2019年時点で、要介護・要支援の方は650万人程度います。その毎月の利用情報が含まれるわけですから、「巨大な」データベースと言えます。

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宮脇 敦士(みやわき・あつし)

 2013年、東京大学医学部医学科卒業、医師免許取得。せんぽ東京高輪病院・東京大学医学部附属病院で初期研修後、東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻にて、医療政策・応用統計を専攻し、19年に博士号取得。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室助教、UCLA医学部客員研究員を経て、23年7月から同大学ヘルスサービスリサーチ講座特任講師。大規模データを用いて良質な医療を皆に届けるにはどうすればよいかということを研究している。

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