宮脇敦士「医療ビッグデータから見えてくるもの」
医療・健康・介護のコラム
介護保険データベースというビッグデータ 医療データとの連携で見えてくるもの
死亡前5年間の介護サービス利用 一部の人に集中
さらに、このデータを、他のデータとくっつけることができます。
もちろん、このデータベースを私たち研究者が使わせていただくときは、匿名化されており、他のデータとくっつけるのは容易ではありません。が、早稲田大学の野口晴子教授らの研究(※1)で、性別や死亡時の年齢、自治体などの情報を用いることで、非常に高い割合で、人口動態統計とよばれる別の公的統計とマッチさせることができることがわかりました。
人口動態統計には、「死亡票」とよばれるもの(なじみがないかもしれませんが、医者が書く死亡診断書とその裏にある死亡届をもとにした情報です)があり、そこで死亡した日時や死因などの情報を得ることができます。
それを利用して、例えば、筑波大学の金らは、死亡前5年間の介護費用の推移を調べました。これまで、同様に死亡前数年の医療費を調べた研究はあったのですが、介護サービスに絞って全国データを用いて行われた研究はありませんでした。
17年に70歳以上で亡くなった約110万人の死亡前5年間の介護サービスの利用パターンを見たところ、60%近くの人は介護サービスをほとんど利用していませんでした。しかし一方で、20%以上の人では常に月約20万円(自己負担は1割負担だと2万円)ほどの介護費用がかかっていました。
この集団では、認知症や老衰による死亡が相対的に多く見られました。この結果については、いろいろな解釈ができるのですが、少なくとも介護サービスをすべての人が利用するわけではなく、一部の人に利用が集中していることがわかります。
そして、その集中のパターンは、病気などの私たちの力ではどうにもならないものの影響を受けています。だからこそ、公的な保険制度として介護サービスを提供する必要性があることがわかります。
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