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医療・健康・介護のコラム
諦めていたおしゃれに挑戦したい…障害者モデルのオーディション 「障害×美容」発信へ
ウェブマガジン「porte(ポルテ)」を発行する臼井理絵さん(35)
障害者モデルが主役のウェブマガジンを発行しています。新たなモデルのオーディションを開催中で、芸能事務所も設立しました。障害のある人たちが美容を楽しめるようにする「障害×美容」の活動を続けています。
オーディションには、12歳~50歳代の男女150人の応募がありました。車いすユーザーや聴覚障害、知的障害、発達障害など多様です。「諦めていたおしゃれに挑戦したい」「未来を変えたい」。皆さんがそのような思いを持っています。
クラウドファンディングで支援を得て、衣装ブランドや最終会場の結婚式場などから協賛をいただいています。同じ思いの人とともに取り組み、社会全体の変化につなげたいと考えています。
ネイリストだった私が活動を始めたのは、2018年に車いすを利用するネイリストと出会ったのがきっかけでした。彼女は知人から技術を学んでいました。専門学校に通おうとしても、車いすでは作業台の高さが合わないとか、多目的トイレがないといった理由で、入学が難しいことを知りました。
ネイリストは基本的には座って施術をするので、技術さえ身に付ければ、活躍できます。美容の仕事に就くのが難しいのは、技術を学ぶ入り口に壁があるためだと考えました。
そこで、車いすユーザーを対象にした教室を開きました。受講者の中には、五輪・パラリンピック関連のイベントの参加者にネイルを施したり、民間団体の検定試験に合格したりする生徒もいます。しかし、車いすで働ける環境は乏しく、就職はできていません。
ネイリストに限らず、障害者にとって就労の選択肢が少ないのは、「できること」を決めつけられているからではないかと感じました。美容の分野から、障害者の可能性を発信したいと思いました。
今年3月に始めたウェブマガジンでは、モデルがカフェでイラストを楽しんだり、浅草寺を浴衣で歩いたりといった写真を掲載し、障害者のイメージを一新するような世界観を目指しています。外出のきっかけになればと、おしゃれな場所のバリアフリー情報も伝えています。
ウェブマガジンは「porte(ポルテ)」と名付けました。フランス語で「扉」という意味です。障害のある人が美容を楽しみ、モデルとして自己表現する姿を通して、新しい時代の扉を開けたいという願いを込めています。
東京五輪・パラリンピックを機に、テレビCMや女性誌でも障害者が活躍するようになりました。それを一過性の波で終わらせないように、活動を続けていきます。美容の現場から幅を広げて、多様な職業で雇用が増えていけばうれしいです。(聞き手・村上藍)
うすい・りえ 1986年、東京都八王子市生まれ。2019年から車いす利用者対象のネイル教室を開く。20年、障害者が美容を楽しむ可能性を広げることを目指し、株式会社「アクセシビューティー」を設立。モデルオーディションの最終審査は11月の予定。
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