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国内1330万人の国民病「慢性腎臓病(CKD)」に初の治療薬承認…腎機能悪化や死亡のリスク下げる

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 腎臓の機能が徐々に落ちていく「慢性腎臓病(CKD)」は、成人の8人に1人が患者とされ、「国民病」とも言われています。今年8月、この病気の治療薬が厚生労働省から初めて承認されました。早めに投与することで、重症化を防ぐ効果が期待されます。(辻田秀樹)

8人に1人の国民病

 腎臓は、血液を 濾過ろか して老廃物や余分な塩分を尿として体外に排出したり、血圧を調整したりする働きがあります。

 CKDは、〈1〉たんぱく尿が出るなど、腎臓に障害が起きていることが明確である〈2〉老廃物などをこしとる糸球体の濾過量(GFR)が60未満になる――のどちらかか、両方が3か月以上続く状態です。

 喫煙や飲酒、運動など、生活習慣と関連するとされます。初期はほとんど症状がありません。

 CKDの患者は、国内で推計1330万人。加齢とともに増え、80歳以上では、4割を占めるという報告もあります。CKDになると、心臓病や脳卒中のリスクが高まるとされています。進行すると、人工透析や腎臓移植を検討しなければならなくなります。透析患者は30万人を超え、年間3万人以上が亡くなっています。

 CKDの治療薬は、これまでありませんでした。そのため、糖尿病など、一因となっている病気の治療薬を服薬したり、禁煙や運動、食事などの指導が行われたりしてきました。腎臓病に詳しい横浜市立大病院副病院長の田村功一さんは「『たいしたことがない』と患者さんが思ってしまうと、治療が続かないという悩みがありました」と話します。

治療への関心促す

CKD 治療薬初の承認…腎臓の機能低下を抑制

 今年8月、英製薬大手アストラゼネカの飲み薬「フォシーガ」が、CKDの薬として承認されました。「SGLT2阻害薬」と呼ばれ、血糖を尿とともに体外に出しやすくする働きがあります。糖尿病や心臓病の薬として使われてきましたが、腎臓の機能低下を抑えることがわかってきました。治験で腎機能の悪化や死亡などのリスクを約4割下げる効果が確認されました。

 田村さんは9月、50歳代の男性にフォシーガを処方しました。腎機能の悪化を示す「血清クレアチニン値」が基準を超えている男性は「数値が改善してほしいと思います」と言います。

 この薬は、透析患者などは対象外です。田村さんは「薬の登場で、治療の重要性が患者さんに理解され、生活習慣の改善も促されることを願っています」と話しています。

 フォシーガ以外の治療薬も今後、登場する可能性があります。田辺三菱製薬は8月、既存のSGLT2阻害薬を、主に生活習慣による「2型糖尿病」があるCKD患者にも使えるよう、厚労省に申請。独製薬大手べーリンガーインゲルハイムなども、治験を続けています。協和キリンは別のタイプの薬の治験を実施するなどしています。

 SGLT2阻害薬は、糖尿病治療薬として使われ始めた当初、重い脱水症状などの副作用がみられました。日本腎臓病薬物療法学会理事長で、東京医科大病院薬剤部長の竹内裕紀さんは「フォシーガの治験データを見る限り、重篤な副作用は目立ちませんが、適切に使うことが重要です」と指摘しています。

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