リングドクター・富家孝の「死を想え」
医療・健康・介護のコラム
新型コロナ感染症、肺炎で死ぬのは苦しいのか?
新規感染者数が大幅に減ってきましたが、新型コロナウイルス感染症の流行がこれで収まるわけではないでしょう。減ったとはいえ、重症化する患者や死者も続いています。
そんな中で聞いたのは、「コロナなどの肺炎で死ぬのは苦しいのですか? いつかは死ぬにしても苦しいのは嫌ですね」という声です。息ができないと苦しいのは経験としてわかるので、呼吸困難で死ぬと聞くと、さぞ苦しいだろうと思うのも無理はありません。
肺炎は高齢者の主要な死因、年間死者約8万人
酸素が十分に供給されなくなると、人間の身体は機能を喪失し、脳の細胞が破壊され、やがて死んでしまいます。一般的に肺炎は、酸素と二酸化炭素の交換を行う肺の中の「肺胞」に炎症が起こり、それによって酸素が供給できなくなる状態を言います。
症状としては、発熱、悪寒、息切れ、せきなどが出て、呼吸が苦しくなり、ひどくなると、胸が圧迫され、激しい痛みに襲われます。体力、免疫力が低下した高齢者の場合、死に直結します。特に高齢者では、誤嚥性肺炎などをこじらせて死ぬことが多く、昨年は約8万人が肺炎で亡くなっています。
コロナ肺炎は静かに進行
ところが、新型コロナ肺炎は、これまでの肺炎の症状とかなり違います、これまで治療にあたってきた医者に聞くと、患者は当初、酸素量が低下しても息切れを感じないと言います。これを「サイレント」と呼んでいて、発見が遅れる原因になっているようです。そのため、血液中の酸素量を指先で調べるパルスオキシメーターが自宅療養の患者に配られたりしているわけです。
つまり、新型コロナ肺炎は静かに進行していき、その間、血中酸素量がどんどん低下していくのです。そうして、呼吸が苦しくなって、気がついたときは、病状はかなり悪化しているのです。そのため、病院に行ったとき、あるいは救急車を呼んだときは、人工呼吸器が必要な状況になっているケースが発生しています。自宅で死亡しているのを発見されることが多いのも、突然、苦しくなってそのまま息絶えてしまうからと言います
肺炎で死ぬのは苦しい、しかし楽にできる
ここで、最初の質問「肺炎で死ぬのは苦しいのですか?」に答えると、苦しいのは確かです。しかし、医療的に苦痛を和らげることができます。人工呼吸器が必要と判断したとき、医者は患者にその旨を告げ、こう伝えます。
「いまから人工呼吸器による治療をします。気管に管を入れますので苦痛を和らげるための鎮静剤で眠ってもらいます」
重症患者に使うECMO(体外式膜型人工肺)の場合も同じです。集中治療室(ICU)で、患者は多くのチューブにつながれ、治療中は眠り続けるだけです。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。