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住宅バリアフリー化の注意点は?…自治体の補助や介護保険が利用できるケースも

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 家族が障害を負ったり、高齢で介護が必要になったりした際、バリアフリー化の住宅改修を考える人もいるだろう。段差の解消などで暮らしやすくなる一方、金銭的な負担が重くなる場合もある。自治体の補助制度や介護保険制度で費用を抑えられるケースもあるが、利用条件が細かく設定され、手続きに時間がかかるといった注意点も多い。(阿部明霞)

補助対象になる場合も

住宅バリアフリー化 住みやすく 昇降機設置、トイレ改修…

改修後、障害を抱える息子が使う家の状態を確認する両親(神奈川県で)

 静岡県在住の家族は、昨年9月に神奈川県内の中古住宅を購入した。仕事中に高所から転落し、2007年から全身マヒで車いすが欠かせない息子(34)が、頻繁に神奈川県内に通院しているためだ。父(63)が目の障害で運転できなくなり、送迎が難しくなった事情もある。

 病院の近くに物件を見つけたが、車いすを使うための改修は必要だった。昨年11月頃から複数の業者と相談をし、今年4月末に着工。8月にはほぼ改修が終わった。

 改修では、車いすに乗ったまま手洗いができるように廊下にあったクローゼットを取り払い、洗面台を設置した。洗面台の下は物入れにせず、車いすがそのまま入れるスペースを確保した。トイレも全面的に作り替え、便器を片側に寄せて車いすでの出入りが容易になるようにした。

 息子は車いすで家の中を巡りながら、洗面台などの感覚を確かめ、「違和感なく使いやすそう」と話した。

 家の前の道路から玄関までは階段があり、車いす用の昇降機を設置した。コンクリートをくりぬく外構工事や、昇降機の購入費用もあり、改修に500万円近くかかったが、全額自費でまかなった。

 当面は通院の拠点として使うが、将来的に一家で移住することも視野に入れている。本格的に住むには介護用のベッドやリフトなども必要になるため、その際には自治体の補助制度を使うことを考えている。

何が必要か相談

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 障害者向けの住宅改修をする場合、まず、どのような改修が必要かを判断する必要がある。本人の状態をよく把握している理学療法士や作業療法士らに、どのような住宅改修が必要か相談するとよい。建築士など専門家が助言してくれる窓口を設けている自治体もある。

 費用負担が重くなるケースもあるが、障害者総合支援法に基づいて、費用の補助を受けられる場合がある。ただ、実際に助成を実施するのは各自治体なので、どこに住んでいるかによって助成内容や要件、金額が異なる。

 助成対象として認められるのは、手すりの取り付けや床の段差の解消、洋式便器への取り換えなど、障害者が日常生活を送りやすいようにする工事が中心だ。

 助成額の上限は数十万円程度が多いが、100万円を超える金額を設定している自治体もある。所得に応じて、自己負担割合が定められている場合も多い。自治体の窓口に事前に相談するのがよい。

介護保険利用 手続き早めに

 要介護認定を受けている場合、介護保険の住宅改修費が支給される場合がある。20万円を上限に改修費の7~9割が自己負担割合に従って支給される。自治体の補助と併用ができることもある。

 ただ、必要な手続きや、支給決定に時間がかかることが多い。SOMPOケア相模原中央居宅介護支援事業所(相模原市)の管理者で、ケアマネジャーの沢本範明さんは「申請書類は自治体から内容の修正などを求められることもある。なるべく早くとりかかる必要がある」と説明する。

 まずはケアマネに介護保険の利用について相談し、業者も決めておく。申請には見積書や申請書、改修の図面、改修前の写真、改修内容などを記載した理由書も必要だ。ケアマネに作ってもらうことが一般的だ。自治体にもよるが、事前申請から着工までに1か月ほどかかることが多く、支給は工事完了後に必要書類を提出してからになる。

 沢本さんは「リハビリで状態がよくなるなど状況が変化することもある。本当に工事が必要か、改修が本人の自立の妨げにならないか、ケアマネとよく相談してほしい」と強調する。判断に迷う場合、工事が不要な福祉用具のレンタルで様子を見るのも手だ。

業者選びも重要

 高齢者や障害者向けの住宅改修では、業者選びも重要だ。利用者の状態にあった対応ができるかどうかがカギになる。可能であれば複数の業者で相見積もりをし、費用やアフターフォローなどを比べて決めたい。

 高齢者らが住みやすい住環境について助言する「福祉住環境コーディネーター」という資格があるが、介護向けの住宅改修を担っている業者の中には、この資格を取得した人が相談に乗ってくれるところもある。

 住宅改修を手がけるフレッシュハウス(横浜市)研修企画部の林志隆さんは「様々な業者があるが、ケアマネや病院、理学療法士など利用者に関わる人との連携がきちんと取れ、現地に足を運んで住宅や利用者の状況をしっかり調査する業者を選んでほしい」と話す。うまく業者が見つけられない場合は、ケアマネや地域包括支援センターなどに相談するとよい。

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