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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

大腸がんの肝転移 肝切除後の抗がん剤治療は全生存期間を改善せず

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日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)

大腸がんの肝転移 肝切除後の抗がん剤治療は全生存期間を改善せず

 大腸がんの肝臓への転移に対する肝切除手術後に、抗がん剤治療を加えても生存期間を延長する効果はみられず、むしろ悪化させる傾向すらあるとの研究結果を、国立がん研究センターが事務局を務めるがんの多施設共同研究組織「日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)」が発表した。

 科学的根拠が不十分なまま広く行われてきた大腸がん肝転移の切除後の補助化学療法のあり方を見直す、世界的に影響をもたらす結果だとしている。米医学誌「Journal of Clinical Oncology」に9月14日付で掲載された。

大腸がん患者の約30%に肝転移 死因の半数以上

 発表によると、肝転移は大腸がん患者の約30%にみられ、大腸がん患者の死亡原因の半数以上を占める。大腸がんの肝転移には切除手術が最も有効な治療とされているが、それでも切除後5年間で70~80%に再発がみられる。

 治療の効果を上げる目的で、肝切除後に抗がん剤治療が行われるが、これまでの研究では、がんが再発しない無病生存期間は延ばすものの、すべての死因を含む全生存期間を改善するかどうかについては議論があった。

 研究グループは、代表的な専門病院を中心に、2007年3月から19年1月まで、300人の患者を肝切除手術だけを行う群149人と、肝切除手術の後に抗がん剤治療(mFOLFOX6)を行う群151人に無作為に分けて比較した。

無病生存割合は改善するものの……

 その結果、5年間の無病生存割合は、肝切除単独群の38.7%に比べ、肝切除後に抗がん剤治療を行った群は49.8%と、切除後の抗がん剤治療を加えた方が有意に高かった。

 ところが、大腸がん以外の全ての死亡も含めた5年間の全生存割合でみると、肝切除単独群が83.1%だったのに対し、肝切除後に抗がん剤治療を行った群は71.2%と、逆に肝切除だけの群の方が高かった。抗がん剤治療を加えた群では生存期間を延ばすどころか、有意差はないものの、むしろ悪化させる傾向がみられる結果となった。

 肝切除後に抗がん剤治療を行った群の約半数で重篤な副作用の発生を認めた。特に好中球減少50%、感覚神経障害10%、アレルギー反応4%などが多かった。3コースの治療を実施した後に亡くなった患者が1人いた。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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