楢戸ひかる「シニアライフの羅針盤」
医療・健康・介護のコラム
老齢年金の繰り下げ受給は来年度から「75歳まで」 額は最大84%増!…年金を増やす準備とは?
毎年1回、お誕生日の頃に到着する「ねんきん定期便」には、二つのチェックポイントがあります。 前回 、一つ目のポイントである、50歳からは「65歳時点の老齢年金の見込み額」が記載されることについてご紹介しました。今回は二つ目のポイントついてお話ししましょう。(本記事で紹介する制度などに関する情報は、2021年9月末時点のものです)

イラスト:平松昭子
年金は受給開始年齢で金額が増減する
「ねんきん定期便」でチェックしたい2つ目のポイントは、下の図にある「C」の部分です。老齢年金の受給開始は原則65歳とされていますが、60歳から70歳の間なら、自分で開始時期を選ぶことも可能です。受給開始を65歳より早める「繰り上げ」をすると年金額は減額され、遅くする「繰り下げ」をすると増額されます。
70歳まで受給開始を遅らせれば、受給額は最大42%まで増えます。Cに記載されているのは、その場合の見込み額です。
ここで、注意すべきポイントがあります。「繰り上げ請求の取り消しや、変更はできない」ということです。受給を繰り上げして早くからもらえば、減額された年金が生涯続くことになります。反対に、受給を遅らせてスタートすれば、増額した年金を生涯にわたってもらえるのです。
貯蓄が多くても「減る一方」は怖い
年金受給の開始年齢について考える時、「何歳からもらうのがオトクか?」といった損益分岐点的な議論も聞きますが、私は、ある風景を思い出します。それは、高級老人施設をFP仲間と見学した時のことです。施設の支配人は、「入居者には、『長生きしちゃったら、どうしよう』と心配されている方が多いです」と言っていました。その施設に入居されている方たちはお金持ちに見え、「この方たちでも、お金が底をつく心配をしているのか!」と、私は 愕然 としたのです。でも、「貯蓄(ストック)がいくらあろうとも、減る一方というのは、案外、怖いことなのかもしれないなぁ」とも感じました。
その点、公的年金は生涯給付なので、お金の流れ(フロー)が止まることはありません。私は、施設見学の時の経験から、「老後の不安を減らす一つの方法として、フローを太くしておくことは大切だ」と考えるようになりました。公的年金の繰り下げ受給は、そのための有効な方法だと思います。
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